現在の位置: ホーム > 札幌弁護士会とは > 声明・意見書(2012年度) > 2012/04/04

声明・意見書2012年度

一覧へ戻る 次の声明へ

死刑執行に関する会長声明

2012年3月29日、政府は3名の死刑確定者に対し死刑を執行した。

当会は、これまでも、会長声明を通して、死刑制度の存廃について国民的議論が尽くされるまで死刑の執行を停止するよう政府に要請してきた。それにもかかわらず、1年8か月ぶりに死刑執行を再開したことは誠に遺憾であり、政府に強く抗議する。

死刑については、死刑廃止条約が1989年の国連総会で採択され、国連人権関係機関は、1997年以降毎年、日本などの死刑存置国に対して、死刑廃止に向けて死刑執行停止を求め、さらに、2007年の国連総会において「死刑執行停止を確立することを求める決議」が104か国の賛成により可決され、2008年には国際規約委員会から日本に対し、公衆に対して必要があれば廃止が望ましいことを伝えるべきであるとの勧告もなされている。

これまで死刑廃止国は着実に増加しており、2012年3月現在、死刑廃止国は事実上の廃止国を含め141か国に上っており、死刑存置国は57か国に過ぎない。とりわけOECDの先進34か国における死刑存置国は日本とアメリカ合衆国50州中の34州という状況にあり、死刑廃止が国際的な潮流となっていることは明らかである。

日本弁護士連合会も、2002年11月22日、「死刑制度問題に関する提言」を発表し、死刑制度の存廃につき国民的議論を尽くし、また死刑制度に関する改善を行うまでの一定期間、死刑の執行を停止する旨の時限立法の制定を提唱し、さらに、2011年10月7日、第54回人権大会において「罪を犯した人の社会復帰のための施策の確立を求め、死刑廃止についての全社会的議論を呼びかける宣言」を採択し、翌2012年2月24日、政府に対し、死刑制度の廃止についての全社会的議論をおこなうため、死刑に関する情報を広く国民に公開し、国会に死刑制度問題調査会を設置し、法務省に有識者会議を設置する等の方策をとり、議論の間、死刑の執行を停止すべきであるとの要請を行うに至った。

小川敏夫法務大臣は、2012年3月9日、「死刑の在り方についての勉強会」の取りまとめ報告書において、「死刑制度の存廃は、刑罰の在り方や刑事司法制度の根幹に関わる重要な問題であり、正に国民の皆さんに議論していただくべき問題であると思います。」とし、「死刑制度の存廃に関する議論が一層深められることを願っております。」と発表したにもかかわらず、何ら国民的議論を経ないまま、今回死刑を執行した。

これまでの再審事件にみられるように、刑事裁判における誤判の可能性は否定しえず、また、2009年5月21日に裁判員裁判が施行されたことに伴い一般市民も死刑について判断を迫られる状況にあって、国民的関心も高まっているさなか、当会は、改めて政府に対し、死刑制度全般に関する情報を広く公開することを要請するとともに、死刑執行を停止し、死刑制度の存廃について全社会的議論を直ちに開始することを求めるものである。

2012年4月2日
札幌弁護士会 会長  長田 正寛

一覧へ戻る 次の声明へ

このページのトップへ