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声明・意見書2012年度

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北海道における最低賃金を大幅に引き上げ、生活保護との逆転現象の解消を求める会長声明

  1. 2012年7月25日、中央最低賃金審議会目安に関する小委員会は、今年度の最低賃金の引き上げ額について、全国平均時間額を744円とする目安を示すとともに、最低賃金が生活保護水準を下回るという逆転現象が生じている北海道を含む11都道府県については、原則2年以内に逆転現象を解消すべきとし、北海道については10円~15円の引き上げ幅を目安として示した。
    それを受けて、2012年8月21日、北海道地方最低賃金審議会は、北海道における最低賃金(時間額)を14円引き上げて719円にすることが妥当であるとの答申をした。
  2. 2008年7月に施行された改正最低賃金法は、地域別最低賃金を定める際には労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮することを求めており(最低賃金法9条3項)、この法改正を受けて最低賃金は毎年に引き上げられ、2008年に時間額703円であった最低賃金の全国平均は、2011年には737円にまで引き上げられた。ところが、このように最低賃金が引き上げられているにもかかわらず、北海道を含む11都道府県において、逆転現象がなおも生じている。
    北海道の最低賃金は、2008年において時間額667円であったが、上記の最低賃金法の改正もあり、2012年には719円に引き上げることが妥当であるとの答申がなされた。ところが、この719円という最低賃金額も、厚生労働省の試算による北海道における生活保護水準の平均月額を時間額に換算した額である735円を、16円も下回っているのであり、逆転現象の解消にはほど遠いと言わざるを得ない。
  3. そもそも、719円という2012年の最低賃金で1カ月(176時間)働いても月の賃金額は12万6千円余りしかなく、年収で152万円弱にすぎない。ワーキングプアの一つの目安とされるラインが年収200万円であるが、この金額はそれを大きく下回るものである。事実、この金額では、単身で生活することも容易ではないであろうし、子どもを生み育てていくことは到底不可能であろう。
    1日8時間働いて、子どもを生み育てていくことが出来るような収入を得ることは、日本社会が持続的に維持、発展していくために必要不可欠であるし、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障した憲法第25条の精神からも当然のことである。
  4. また、厚生労働省は、最低賃金と生活保護水準との乖離額を過少に試算していることも看過できない。例えば、厚生労働省の試算は、若年単身者における生活保護水準との比較をしているが、若年単身者で生活保護を受給している者は実際には殆どおらず、少なくない受給世帯は子供の養育を行っており、そのような世帯については若年単身者に比較すると保護費が相当額加算されるので、そのような世帯も比較対象に加えて比較をすると、最低賃金と生活保護水準の乖離額は大幅に拡大する。
  5. 当会は、北海道労働局に対し、今回の答申における引き上げ額に縛られることなく大幅な最低賃金の引き上げをし、生活保護との逆転現象を解消することを求めるものである。

2012年(平成24年)8月24日
札幌弁護士会 会長  長田 正寛

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