声明・意見書

商品先物取引法における不招請勧誘禁止緩和に抗議する会長声明

 当会は、2014年(平成26年)4月5日付けで公表及び意見募集がなされた商品先物取引法施行規則改正案に対し、同月28日付け意見書において、これに反対する意見を表明したが、経済産業省及び農林水産省は、本年1月23日、商品先物取引法施行規則の一部を改正する省令(以下「本省令」という。)を定めた(施行は2015年6月1日予定)。
 本省令は、上記公表案からは若干修正されているものの、同規則第102条の2を改正し、顧客が65歳未満で一定の年収又は資産を有する者である場合に、顧客の理解度を確認するなどの要件を満たしたときは、不招請勧誘の禁止の例外とすることを規定したものである。

 しかし、本省令に基づき、顧客が上記要件を満たすかどうかの確認を不招請で行うということになれば、この確認自体が商品先物取引契約の締結を目的とする勧誘行為の一環であるから、不招請勧誘を事実上許容することとなる。すなわち、本省令は、商品先物取引法の禁止する不招請勧誘を省令によって実質的に解禁するに等しく、法律の委任の範囲を超える違法なものであり、透明かつ公正な市場を育成し委託者保護を図るべき同法の趣旨とは相容れないものである。

 また、本省令では、上記要件の確認方法として、委託者に年収や資産の申告書面を差し入れさせたり、書面による問題に回答させて理解度の確認を行う等の手法を示してはいるが、いずれも、現在においても多くの商品先物取引業者によって実行されているものである。しかし、実際には、業者が委託者を誘導して事実と異なる申告をさせたり、正答を教授するなどの行為が蔓延しているのであって、これらの手法に委託者保護の実効性があるとは到底評価できない。

 そもそも、商品先物取引法における不招請勧誘を禁止する規定は、長年にわたり、同取引による深刻な被害が問題となっており、度重なる行為規制強化によっても委託者保護の実効性を欠きトラブルが絶えなかったことから、与野党一致の下、2009年(平成21年)7月の法改正によって導入された経緯があるところ(2011年1月施行)、仮に本省令が施行されれば、商品先物取引による被害が再び増大することが懸念される。

 本省令は、商品先物取引の不招請勧誘禁止に至った立法経緯及び被害実態を軽視し、法律の委任の範囲を超え、省令によって不招請勧誘を事実上解禁するものであるから、委託者保護の観点から許容することができず、当会は、本省令の施行に強く反対する。

2015年2月18日
札幌弁護士会
会長  田村 智幸

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