声明・意見書

改めて安保法制改正法案の廃案を求める会長声明

現在、参議院において審議中の国際平和支援法案及び平和安全法制整備法案(以下、合わせて「安保法制改正法案」という。)について、政府は、衆議院と同様、野党の反対を押し切って、本年9月17日に委員会採決を行ったうえで、18日に参議院本会議での採決を図る方針であるとの報道がなされている。

 当会は、昨年5月3日における「集団的自衛権行使の容認に反対する会長声明」を発表して以降、繰り返し、集団的自衛権行使容認が憲法9条の恒久平和主義に反して違憲であること及び憲法の実質的改正を企図するものであり憲法の基本原理である国民主権にも反すること等を指摘してきた。そして、安保法制改正法案が本国会に上程された後は、本年5月22日の定期総会において、「集団的自衛権行使等を容認する閣議決定の撤回を求めるとともに、同閣議決定に基づく関連諸法令の改正及び制定に反対する決議」を圧倒的多数で議決した。さらに、本年7月16日には、衆議院において安保法制改正法案が強行採決されたことに対し、「国際平和安全支援法案及び平和安全法制整備法案の衆議院での採決の強行に抗議し、参議院での廃案を求める会長声明」を発表しているところである。

 安保法制改正法案については、当会を始め、日本弁護士連合会、全ての弁護士会連合会、全ての弁護士会が反対の意見表明を行っている。また、多くの憲法学者を始め、歴代内閣法制局長官、元最高裁判所長官を含む多くの元裁判官も、安保法制改正法案の違憲性を指摘している。さらに、国民の間でも、安保法制改正法案が憲法に反していることの理解と日本が他国の戦争に巻き込まれるのではないかという懸念が広がり、若者、母親、高齢者など、年齢、性別、立場を超えた市民各層による反対運動が急速に拡大し、自衛隊関係者からも安保法制改正法案に対する懸念や反対の声が挙げられている。各種世論調査においても、安保法制改正法案に「反対または少なくとも本国会で成立を強行すべきではない」とする意見が国民の過半数を占めるに至っている。

 これに対して、政府は、安保法制改正法案の合憲性を合理的に説明することができず、曖昧な答弁を繰り返してきたのみならず、本年9月14日の委員会審議では、本法案の立法事実として掲げていたホルムズ海峡での機雷掃海に関して、安倍首相自ら、「今現在の国際情勢に照らせば、現実の問題として発生することを具体的に想定しているものではありません。」と答弁し、立法事実の不存在を自認するに至っている。

このように、安保法制改正法案は憲法に違反するものであるのみならず、さらに、多くの国民及び有識者の反対の声にもかかわらず、参議院の委員会及び本会議において採決が強行されるとすれば、民主主義の根幹も否定する暴挙といわざるを得ない。

当会は、改めて、政府・与党が、安保法制改正法案の採決を強行せず、参議院において同法案を廃案とすることを強く求めるものである。

2015(平成27)年9月16日
札幌弁護士会
会長  太田 賢二

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