弁護士と司法書士の違い
司法書士のうち、法律相談を受けることができる司法書士と、受けることができない司法書士がいるとききましたが、どうなっているのですか?
司法書士は、登記又は供託に関する手続についての代理や、法務局・裁判所等に提出する書類の作成などをすることができ、これに必要な限度で相談に応ずることができます。
しかし、司法書士というだけでは法律相談を受けることはできません。司法書士のうち、所定の研修を受け法務大臣の認定を受けた者(※)のみが限られた範囲で法律相談を受けることができます。
※「認定司法書士」と呼ばれることもあります。
弁護士にはこのような区分・制限はなく、弁護士であれば誰でも法律相談を受けることができます。
認定司法書士は、どのような相談でも受けてもらえるのでしょうか?
認定司法書士は、簡易裁判所における訴訟手続の対象となる紛争であって、紛争の目的の価額が140万円を超えないものについてのみ、相談に応じることができます。簡易裁判所が「訴訟の目的の価額が140万円を超えない請求」について裁判権を有することから、認定司法書士の受けることのできる法律相談にも「紛争の目的の価額が140万円を超えないもの」という上限があります。
したがって、認定司法書士は金額が140万円を超える事件について法律相談を受けることはできませんし、代理人となって相手方と交渉することもできません。また、当初、金額が140万円以下の事件という前提で法律相談や交渉の代理を始めたところ、途中で実は140万円を超える事件であることが明らかになった場合は、直ちに法律相談や交渉を中止しなければなりません。
なお、認定司法書士が代理できるのは、簡易裁判所における一定の手続とされています。したがって、認定司法書士は、金額が140万円を超えない手続であっても、地方裁判所や家庭裁判所における手続の代理をすることはできません。
さらに、認定司法書士は、簡易裁判所における以下の手続においても代理することはできません。
(1) 少額訴訟債権執行を除く強制執行に関する事項
(2) 借地非訟事件などの手続
弁護士には、以上のような制限はありません。
司法書士に、離婚や養育費請求の法律相談を受けてもらえるのでしょうか?
認定司法書士であっても、簡易裁判所における訴訟手続の対象となる事件に関する法律相談しか受けられません。
したがって、そもそも金銭請求ではない離婚に関する法律相談を受けることはできません。また、養育費や財産分与の請求は、金額が140万円以下であっても家庭裁判所における手続の対象となる事件ですから、これらについても法律相談を受けることはできません。
弁護士には、以上のような制限はありません。
司法書士に相続の法律相談を受けてもらえるのでしょうか?
認定司法書士であっても、簡易裁判所における訴訟手続の対象となる事件に関する相談しか受けられません。
交渉を要する遺産分割など、相続に関する事件は家庭裁判所における手続の対象とされています。したがって、認定司法書士がこれらの事件について法律相談を受けることはできません。
弁護士には、以上のような制限はありません。
認定司法書士に、請求額が140万円以下の訴えの提起を依頼しました。認定司法書士が簡易裁判所に提訴したところ、簡易裁判所から、地方裁判所へ移送すると言われてしまいました。この場合、どうなるのですか?
認定司法書士が代理できるのは簡易裁判所における手続に限られます。したがって、司法書士に対する依頼を取りやめて、改めて弁護士に依頼し直す必要があります(※)。
最初から弁護士に依頼していた場合は、地方裁判所へ移送されたとしても、弁護士に対する依頼を取りやめる必要はありません。引き続き、当初依頼した弁護士に代理人を務めてもらうことができます。
※札幌弁護士会法律相談センターでは、認定司法書士代理を引き継ぐ弁護士の紹介を行っています。
認定司法書士に、請求額が140万円以下の訴えの提起を依頼し、簡易裁判所で勝訴判決をもらったのですが、相手方から控訴されてしまいました。この場合、どうしたらよいのでしょうか?
控訴審は地方裁判所で審理されることになりますが、認定司法書士が代理できるのは簡易裁判所における手続に限られます。したがって、従前の認定司法書士に控訴審での代理を依頼することはできません。改めて弁護士に依頼し直す必要があります(※)。
最初から弁護士に依頼していた場合は、控訴されたとしても、引き続き、当初依頼した弁護士に代理人を務めてもらうことができます。
※札幌弁護士会法律相談センターでは、認定司法書士代理を引き継ぐ弁護士の紹介を行っています。
借金の整理を、司法書士に依頼した場合と、弁護士に依頼した場合とで、違いはあるのでしょうか?
以下のとおり様々な違いがあります。
ア 貸金業者に対し過払金の返還を求める場合、金額が140万円を超えると、認定司法書士であっても交渉や和解の代理ができません。
他方、弁護士にはそのような制限はありません。
したがって、金額の大きな過払金の請求については、弁護士に依頼するほかありません。
イ 自己破産や個人再生手続においては、司法書士は、認定を受けているか否かにかかわらず、申立書類の作成はできますが代理人にはなれません。したがって、司法書士は破産審尋(裁判官から直接、説明を求められる手続)等への立会はできません。
他方、弁護士は、代理人として破産審尋等に立ち会うことができます。
ウ 司法書士に個人再生申立の書類作成を依頼した場合、司法書士は代理人になれないため、裁判所への申立は本人申立として扱われます。本人申立においては、再生手続を監督する個人再生委員が選任されることが多く、その場合は、再生委員に対する報酬に充てる費用を裁判所へ追加費用として納付する必要があります。
弁護士に依頼した場合は、原則として個人再生委員が選任されることはなく、追加費用の発生はありません。
※以上のとおり、司法書士の法律業務においては弁護士と異なり様々な制約がありますので、種々の法律相談は札幌弁護士会法律相談センターへご相談ください。