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2007年(平成19年)7月31日
経済産業省商務情報政策局商務流通グループ取引信用課
パブリックコメント担当 御中
札幌弁護士会
会長 向井 諭
産業構造審議会割賦販売分科会基本問題小委員会が2007年6月に取りまとめた中間整理(以下「中間整理」という。)に対し、当会は、以下のとおり意見を述べる。なお、当会は、すでに本年3月12日付け「割賦販売法の改正を求める意見書」を提出し、割賦販売法の抜本的な改正を要請していることを申し添える。
第1 意見の趣旨
クレジット会社は、クレジット契約の与信対象となる加盟店の取引につき、その締結過程、内容、履行可能性などについて必要な調査を行い、不適正な取引にクレジット契約が使われることを防止すべき義務(不適正与信防止義務)を負うことを定める。
そして、かかる義務を怠った場合は、行政処分の対象とするとともに請求権制限や損害賠償義務といった民事的効果を定める。
また、クレジット契約において、与信対象である取引の無効・取消・解除により購入者の代金支払債務が遡及的に消滅したときは、購入者はクレジット会社に対し未払い金の支払を拒否できるだけでなく、既払い金の返還を請求できるものとする。そして、その際のクレジット会社の負う責任は、無過失共同責任とする。
クレジット契約のうち参入規制がされていない個品割賦購入あっせんについて、これを登録制とするとともに、クレジット会社がクレジット契約の内容を記載した書面の交付義務を負うことを定める。
特商法対象取引を対象とするクレジット契約に関し、購入者又は保証人の支払能力を超えるクレジット契約を具体的な基準を設けて禁止する。
過剰与信基準については、「既存の金銭貸付け及びクレジット等による債務も含めた総債務残高が年収額の3分の1を超える」ことを原則としつつ、クレジット会社に基準額を超えた支払が可能と認めるべき合理的根拠の説明責任を課すことによって例外を設ける。
そして、上記基準に違反した場合について、行政処分の対象とするとともに、請求権制限の民事的効果を定める。
また、個人信用情報機関の利用義務を規定し、与信調査記録の作成・保存・開示義務を定める。
クレジット契約の与信対象である取引に関する政令指定商品制を廃止し、原則としてすべての契約を適用対象とする。
また、クレジット契約に関する割賦払い等の要件を撤廃し、1回払いや2回払い の契約も適用対象とする。
第2 意見の理由
近時、クレジット会社が、悪質な販売業者の行う違法・不当な商法にクレジットを利用させるという形でこれを助長しているのではないかということが大きな問題となっており、北海道内においても、2005年秋以降だけで、以下のようなクレジットを利用した事例が次々と発覚している。
① ブルームーン事件
2006年2月末、ブルームーンが札幌地方裁判所に対し破産申立を行ったが、同社によってクレジット会社から立替金を詐取するために大掛かりな名義借りが行われていたことが発覚した。
ブルームーンは「ラッセン」等の絵画を販売する自称画商であったが、名義借りを行うにあたって、同社は、「画商は、画商名義でラッセンの絵画を卸元から仕入れることができない。そこであなたの名義で購入したことにして欲しい。」と持ち掛けていた。また、絵画を実際に購入させておきながら絵画を引き渡していない事例や、同社が購入者から絵画をレンタルしたことにして購入者に絵画を引き渡さない事例、さらには同社が消費者の全く認識のないところで申込書を偽造してクレジットを組んでいた事例も散見された。そして、いずれの事案においても契約書等の署名や住所等の記載は、同社の従業員によってなされているものが大多数であった。札幌弁護士会において、同年3月に被害者説明会を開催し、被害状況を調査したところ、被害者400名以上、被害総額5億円以上、クレジット会社も12社にわたっており(但し、5社で8割以上を占めている。)、被害者の中心は20代、30代の若者であった。
この事件では、絵画は1点50万円から150万円の価格で販売されたことになっており、ブルームーンが設立された1999年4月以降、同社が販売したとされる絵画は少なく見積もっても2000点を超える。これだけの絵画(主にはラッセン)が北海道で大量に売却されたとされること自体、不自然極まりなく、また、同社の代表者等、同社の設立に関与した者の年齢はいずれも30歳前後であり、絵画販売に関しては何らの実績もない者であった。
本件は,クレジット会社の極めて簡易かつ形式化したクレジット契約の審査と、加盟店に対する十分な管理がなされないことに乗じて、消費者を利用してクレジット会社から立替金を騙し取る詐欺集団的な販売店が発生し、消費者がこれに巻き込まれていく危険性を示している。
② 岸田呉服店事件
2006年2月、北海道室蘭市の岸田呉服店におけるクレジットの不正使用事件が発覚し、同年3月、札幌弁護士会において相談会を開催したところ、被害者数は把握できているだけで40名を超えており、被害総額は6000万円以上に及んでいることが判明した。
調査の結果、岸田呉服店経営者から「利息が安くなるので、他の信販会社に切り替えないか。」などと持ちかけられ、二重にクレジットを組まれた事例、「クレジットを一本化しましょう。」などと言われて、それに従ったつもりでいたが、実際は一本化されておらず、二重にクレジットが組まれていた事例、「資金繰りが苦しいので、名義を貸してくれ。」などと持ちかけられ、言われるがままに名義貸しをした事例、名義を勝手に使われた名義冒用の事例などがあった。また、同店経営者からは、消費者に対して、クレジット会社からの電話確認に対し「はい。」と答えるように指示がなされていた。
被害者のほとんどが高齢者で、岸田呉服店と長年の付き合いがあり、経営者を信頼していたがために関わってしまった者も多かった。また、そもそもクレジットの仕組みを理解していない者が多く、かかる無知に乗じたものと思われる。
③ クレジットによる次々商法被害
札幌弁護士会において、2005年9月に高齢者の次々被害に対する面談相談、10月に過剰与信に関する電話相談、12月には高齢者被害に関する電話相談をそれぞれ実施した。計27件という多数の事例が寄せられたが、ほとんどがクレジット絡みの被害相談であった。中には、月収約15万円の77歳の女性に対し、宝石、呉服等を次々に売り付けて合計600万円を超えるクレジットが組まれ、月の支払額が20万円近くに達する月もある事例(支払期間のおよそ2分の1が10万円を超えている。)など、生活そのものを破壊してしまうような事例も多々あった。
2006年9月にも、特に被害が大きいと思われる呉服、アクセサリーに関する次々商法に関する電話相談を実施したところ、計24件の被害相談が寄せられたが、そのほとんどがクレジットを伴うものであった。
これらの相談によっても高齢者を中心に多額のクレジットが組まされている事態が明らかとなっており、クレジットの支払額が、唯一の収入であり、生活を支えるはずの年金額を超えていることも多々あり、深刻な問題が起きている。また、成人に達したばかりの若者も狙われる傾向が伺える。
こうした中で、同年9月、株式会社宝石貴金属の店ありもと(以下「ありもと」という。)及びこれを加盟店とするクレジット会社に対して損害賠償請求訴訟が提起され、その事実が報道されるや否やクレジット会社が次々に「ありもと」との加盟店契約を打ち切り、その結果、同社は倒産するに至った。この事例も、次々販売のような商法がクレジットによって支えられている構図を浮き彫りにしている。
このように現行の割賦販売法は、クレジットを用いた悪質商法による被害・トラブルを防止し、救済するための規定が極めて不十分であって、クレジットトラブルを実効的に防止し、被害を救済するための方策を講じることは急務であり、そのためには割賦販売法について、以下のような法改正を早急に行う必要がある。
(1) 現行割賦販売法には、クレジット会社の不適正与信防止(加盟店管理)に関する明文規定がない。
このため、クレジットを利用した悪質商法や名義借り等のクレジットの不正使用が繰り返されていても、不適正与信防止に関するクレジット会社の法的責任が不明確であるため、クレジット会社による審査・管理の実は上がっていない。
また、クレジット会社としては、与信を続けることで問題のある加盟店を延命させて債権回収を図る方が有利であるため、加盟店を管理する動機付けが乏しい状況にある。
それゆえ、結果として被害・トラブルの発生を防止できないのである。
(2) また、旧通商産業省及び経済産業省は過去幾たびもクレジット業界に通じた通達や要請による指導を重ねてきたが、それらも功を奏していないのみならず、クレジット業界団体を通じた指導では、そうした団体に所属せずにクレジット業務を行っている貸金業者などに対しては十分に周知することすらできない。
(3) さらに、クレジット制度においては販売契約と与信契約が密接・不可分に作用しており、クレジット会社は、提携している加盟店の営業活動によってクレジット契約を獲得する構造となっている。
こうした構造から利益を得る立場のクレジット会社は、加盟店の勧誘・販売等の行為や取引内容、履行の確実性を審査・管理するなどして、不適正な取引にクレジット契約が使われることを防止する義務があるものとして、そのことを法律上に明記すべきである。
(4) この点、ダンシング事件に関する大阪高等裁判所平成16年4月16日判決も、「信販会社が継続的に提供するクレジットシステムにより悪質販売業者の不適正な販売行為が助長されている関係がある」「こうした信販のシステムが孕む構造的な危険(病理現象)については、システムの開設者である信販会社が信販のシステムを悪用されないよう加盟店の調査・監督義務を徹底することにより対処することが期待されている」と判示している。さらには、同事件に関する大津地方裁判所平成16年12月20日判決や岡山地方裁判所平成16年12月21日判決、ジェイメディア事件に関する仙台地方裁判所平成17年4月28日判決などにおいても、加盟店審査・管理義務が肯定されている。
(5) 「中間整理」においても、これまでの行政当局による累次の通達によっては、「悪質な販売業者を排除する効果は不十分であるとの指摘が多数」あって、「訪問販売等の特定商取引法の規制対象取引における消費者被害を防止するためには、当該取引分野にクレジットシステムを提供するクレジット事業者が積極的に不適正与信の排除に取り組む必要があり、クレジット事業者に対し加盟店の調査を含めて適正な与信を行う法的義務を課すべきであるとの意見が多数出された。」ということであるから、今後も、クレジット会社の不適正与信防止義務の明文化の実現に向けて審議すべきである。
そして、クレジット会社の不適正与信防止義務の実効性を確保するために、これを怠った場合には、改善指示や業務停止等の行政処分の対象とすることに加え、購入者に対する請求権の行使が制限される民事的効果を規定すべきである。
(6) また、現行割賦販売法30条の4は、「抗弁の対抗」の効果として、購入者のクレジット会社に対する未払い金の支払拒否についてのみ規定し、既払い金の返還については規定していない。
しかし、支払途中のどの段階で与信対象の取引に関する問題が発覚し、抗弁主張を行ったかによって、救済される範囲が異なるのは合理性を欠く。
そして、何よりも、現行法における「抗弁の対抗」の効果が、購入者が問題に気づいて抗弁主張をした以後の未払い金の支払拒否に止まっている結果、クレジット会社にとっては、仮に加盟店の販売方法に問題があることを察知しても、直ちに加盟店契約を打ち切る等の対処をするより、加盟店に経営を継続させる方が経済的に有利となっている。そのため、悪質加盟店が引き続きクレジットを利用しながら営業を継続して、さらに被害が拡大することを防ぎ得ないという実態がある。
したがって、被害救済はもちろんのこと、クレジット会社の不適正与信防止を徹底するうえにおいても、与信対象である取引の無効・取消・解除により購入者の代金支払債務が消滅したときは、購入者はクレジット会社に対し未払い金の支払を拒否できるだけでなく、既払い金の返還を請求できるものとすべきである
また、その際、購入者側がクレジット会社と加盟店との間の内部事情を知ることは極めて困難であることから、既払い金返還に伴ってクレジット会社の故意・過失の証明を購入者側に要求することは立証のハードルが高くなりすぎて、多くのケースで被害救済ができなくなる。
よって、実効的な被害の予防・救済のためには、クレジット会社の無過失共同責任を定めることが不可欠である。
この点、クレジット会社に過度の負担を強いることになるのではないかという反論が考えられるが、クレジット会社が前述の不適正与信防止義務を尽くしていれば、クレジット会社は、悪質商法等によって販売契約が遡及的に消滅することを未然に防止することができるのであるから、抗弁対抗の範囲を既払い金返還にまで拡大し、かつ、無過失共同責任を定めても、過度の負担を強いることにはならない。現に、イギリス、フランス等の主要国の消費者信用法は、クレジット会社が既払い金の返還義務を負うこと(販売業者との共同責任又は与信契約の効力否定)を規定していることで、悪質商法による被害の救済を容易にするとともに、クレジット契約を利用する消費者の安心・安全をもたらし、クレジット産業の発展を促進していると評価し得る状況にある。
むしろ、その利便性ゆえに我が国の消費者信用市場において重要性を増しつつあるクレジットの安全・安心を向上させるさせるために無過失共同責任を定めることは、その更なる発展にも寄与するものと考えられるのであり、政策的にも妥当である。
(1) 現行法において、個品割賦購入あっせん取引は、クレジットカード取引(総合割賦購入あっせん取引等)のような登録制(法31条)の対象となっておらず、参入規制がされていない。
そのため、同法に違反する事実があっても行政上の措置や、その前提となる調査すらも十分に行えない状況にある。
ところが、クレジット契約の中で被害が多発しているのは個品方式のクレジット取引に関してであり、かかる現状に鑑みるならば、個品方式を含めクレジット事業者は全て登録制として、行政規制権限を及ぼす必要がある。
(2) また、現行法では、個別割賦購入あっせん取引に関して、クレジット会社から購入者に対する書面の交付義務は規定されておらず、販売業者が、与信に関する事項も含めた書面の交付義務を負うに止まっている(法30条の2第5項、30条の2の2第1項)が、不適正与信の防止に向けたクレジット会社の責任を明確化するためにも、クレジット契約を締結したときには、クレジット会社と販売業者が共同して、購入者に対し与信に関する事項を記載した書面を交付すべきことを義務づけるべきである。
(3) この点について、「中間整理」によれば、「販売勧誘行為に直接携わっていない個品割賦購入あっせん業者に書面交付を義務付けるのは実務上やや無理があるとし、まずは販売業者の書面交付義務をさらに強化し、記録不備の書面については与信をしないという業界の自主的取組で対応すべき」との意見が一部にあったということである。
しかし、前述のとおり、クレジット会社と販売業者が共同して書面交付義務を負うものと定めることは実務上も何ら不都合はなく、むしろ、悪質販売業者などが書面交付を怠った場合におけるクレジット会社の法的責任を明確化する上で、その明文化は不可欠である。
(1) 現行割賦販売法38条は、「割賦販売業者等は、購入者の支払能力を超えると認められる割賦販売等を行わないように努めなければならない」と規定してはいるが、違反に対する制裁を伴わない訓示規定に止まっているため、全く実効性がない。
(2) 言うまでもなく、近年の多重債務者の増加は、与信業者が債務者の支払能力を十分考慮することなく与信を行う結果としての「過剰与信」によるところが大きい。例えば、わずかな年金収入しかない高齢者や、安定した収入のない若者らにクレジットで高額な商品を販売して支払困難に陥らせる事例や、すでに多重な債務を負担している者にさらに次々と与信を重ね、雪だるま式に債務額を増大させる事例が蔓延している。
多重債務の問題は、借り手の自覚を唱えるだけで解決し得るようなものではなく、「貸し手の注意」を義務づけない限りはおよそ解決できない性質のものである。
(3) したがって、クレジット契約に関しても早急に実効性のある過剰与信規制を行う必要があり、クレジット会社に対し、購入者又は保証人の支払能力を超えるクレジット契約の締結を禁止すべきである。
(4) この点、2006年12月13日に成立した「貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律」により題名も含めて改正された貸金業法13条の2が、貸金業者に対し総借入残高が年収等の3分の1を超えることとなる貸付けを原則禁止しているが、過剰与信規制の必要性は貸金業以外の分野でも同様であるから、クレジットにおいても、特に問題の多い特商法適用対象取引を対するクレジット契約については、「既存の金銭貸付け及びクレジット等による債務も含めた総債務残高が年収額の3分の1を超えるか否か」を「支払能力を超えるか否か」の原則的基準とすることが考えられる(いわゆる総量規制)。
但し、クレジット契約は商品等の購入に直接結びついており、必要かつ支払可能な契約を不当に制限することのないように配慮すべきと考えられる。よって、クレジット会社に対し、原則的基準額を超えた支払が可能と認めるべき合理的根拠の説明責任を課すことによって、一定の例外は許容すべきである。
(5) さらに、こうした過剰与信規制を実効化するためには、クレジット会社や自社式割賦販売業者による違反があった場合には、改善指示や業務停止等の行政処分の対象とするのみならず、購入者等に対する請求権を制限する規定を設けるべきである。
裁判例でも、過剰与信に該当する部分の請求を権利の濫用ないし信義則違反として制限しているものがある(釧路簡易裁判所平成6年3月16日判決・判例タイムズ842号89項)。
(6) この点、総量規制方式に対しては、クレジット取引の市場規模を過度に抑制することになるという反論があり、また、貸金業者からの借り入れの場合とは異なって、クレジットの場合は、預貯金等の財源はあるが現金を準備して支払う代わりにクレジットを利用するケースも少なくないと考えられる。しかし、そうしたケースについては、年収額の3分の1を超える支払額となる与信であっても、個別に審査・確認して支払可能と認められるならば与信できる余地があり、また、総量規制の適用対象を、クレジット取引全体ではなく、被害が多く発生している特商法適用対象取引に対するクレジット契約に限定すれば、クレジット市場全体への影響は少なく、クレジット取引の市場規模を過度に抑制することにはならない。
(7) また、以上に関連して、クレジット会社に対しては、購入者及び保証人からの聴取とともに個人信用情報機関の利用によって、支払能力等を調査することを義務づける必要がある。
さらには、そうした調査の結果とクレジット契約を行うことが可能であると判断した理由を記載した与信調査記録の作成を義務づけ、一定期間保存させるとともに、購入者等からその開示を求められたときにはこれに応じる義務を課すべきである。
(1) 現行割賦販売法は政令指定商品制を採用しているため、同法の規制対象となるのは制令で定めた指定商品・権利・役務の取引に関するクレジット契約に限られている。そのため、取引対象が指定商品等に含まれない事例に関するクレジットトラブルが後を絶たず、その都度、被害の後追い的に政令で追加指定するという場当たり的な対処をせざるを得ないのであって、クレジット被害に対する被害回復や被害防止を図ることはできない。
そもそも、割賦販売法の目的は、クレジット取引の公正化及び一般消費者保護にあるのだから、クレジット契約の規制において、取引対象品目により適用の有無に差を設けることには合理性がない。
また、諸外国の消費者信用法を見ても、取引対象品目によって適用範囲を限定する制度を採用する例は見られない。
したがって、クレジット契約に関する現行法の指定商品制は廃止すべきであり、仮に法規制が不適切な取引品目があるとすれば逆に適用除外品目(ネガティブリスト)として規定すべきである。
(2) また、現行割賦販売法が規制対象としているクレジット取引は、「2月以上の期間にわたり、かつ、3回以上に分割して」支払う割賦払い、又は、「あらかじめ定められた方法により算定した金額」を支払うリボルビング払いのいずれかに限られている。
しかし、現実には、全クレジット契約のうち、現行法の割賦払い又はリボルビング払いの要件に該当しないものが実に7割強を占めている。しかも、近時の悪質商法においては、割賦販売法の適用を免れるという意図で1回払い、2回払いのクレジット契約を締結させている事例が増加している。
この点、クレジット契約が有する代金支払が購入後になるという性格や、販売契約と与信契約の密接不可分性といった特徴に鑑みた規制を行うにあたり、支払回数によって適用の有無を区別することは合理性を欠く。また、同時に、このような「法の隙間」を狙った悪質商法の出現を引き続き許すことにもなる。
したがって、適用対象となるクレジット契約に関する現行法のような要件は撤廃し、一括払い・分割払い・リボルビング払い等の方式に関係なく、支払方法が後払いであれば適用対象とすべきである。
以上
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