1. 消費者保護委員会の立場
消費者保護委員会は、消費者の立場に立って活動をしています。
それは、個人は誰でも消費者の立場になりうるからです。消費者と事業者との間には格段の情報格差があり、両者は対等な立場ではありません。海千山千の業者の勧誘文句に一消費者では太刀打ちできないのが現状です。
悪徳商法を野放しにしていては、誰が被害者になるかわかりません。明日は我が身です。また、このような悪徳商法で儲かっているとしたら、日々、真面目に働いている人々はむくわれません。
2. ルールを遵守すること
どのような商売であろうとも、ルールを守ることは最低限必要なことです。ルールすらも守られなくなったら無法地帯となり、力の強い者が弱い者いじめをする社会となりかねません。
最近の悪徳商法は、リフォーム詐欺(老人を騙したり、補修しないと家が倒れるなどと嘘をついて契約をさせたりするものです。)に見られるように、もはや商売ではなく、犯罪としかいいようのないものまであります。
当委員会は、事業者にルールを守らせ、社会的経済的弱者も自立した社会生活を送ることができるような、消費者保護制度を作ることが重要であると考えています。
3. 行政、立法への働きかけ
消費者基本法や特定商取引法では、ルールある営業活動が行われるように行政の役割、権限を定めています。行政こそが業者にルールを守らせなければなりません。
なぜなら、消費者事件は、起きてしまった事件について被害回復に力を注ぐよりも、消費者事件が起きないように防止することの方が合理的であり、効率的だからです。
行政が業者を強く監視して、消費者被害を未然に防がなければなりません。
また、これまでのルールを守らせるだけでなく、消費者被害に合わせた新しいルール作りも重要です。お年寄りなどに呉服を次々に買わせる次々商法も社会問題になりました。実際に、呉服だけで1000万円以上も買わされるという事件が起こりましたが、これはどう見てもおかしい、という社会的批判が強まっていました。
2009年までには、訪問販売等の規制を強化した特定商取引法や、訪問販売などと結びついたクレジットに対する規制を強化した割賦販売法の改正も実現しました。その改正の中で、呉服などの過量販売に対する解除権も実現しました。
今後は、現に発生している他の消費者被害の分野についても、札幌弁護士会は、行政や議会に対して提言や要請を行っていきます。
このように弁護士(会)の活動は、裁判所(司法)だけではなく、行政や立法への働きかけや提言なども幅広く行われています。
4. 高金利問題
2010年6月、改正貸金業法の完全施行に伴い、消費者金融や信販会社のグレーゾーン金利は廃止され、すべて利息制限法によって規律されることになりました。
これによって、最高年率29.2%の異常な高金利から、年率15~20%にまで引き下げられました。
これは、この高金利が、家庭崩壊や自殺、無理心中などの悲惨な事件を引き起こし、あるいは逆に強盗などの犯罪も誘発するなど、大きな社会問題となっていたからです。
同時に、消費者金融などが消費者に貸し付けてもよい上限額も決められました(総量規制)。
一部には、この規制によって、消費者金融からお金を借りにくくなり、ますます生活に困る人も出てくると批判されることがあります。しかし、消費者金融からの借入によって生活しなければならないことがあるとすれば、それ自体が異常なことであり、誰もが安心して生活できるセーフティネットの充実こそが求められています。
今後とも、札幌弁護士会は、このセーフティネットの充実に向けて尽力していきます。