交通事故問題Q&A

札幌弁護士会 法律相談センター 著

交通事故問題Q&A

質問

Q1.追突事故に遭ってから半年経ちました。まだ首と背中に痛みが残っていて病院に通っているのですが、保険会社から治療費の支払を打ち切ると言われています。もう治療はできないのでしょうか。

質問

負傷について通常なされる治療が一応終了し、それ以上治療による症状の改善が期待できない状態を症状固定といい、症状固定に至ると保険会社は治療費の支払を終了し、それ以後にも残っている痛みに対しては後遺症が残っていると認められれば、後遺症に対する慰謝料等が支払われることになります。
症状固定の時期は医師の判断によりますが、あなたの場合はまだ症状固定に至っていない可能性もあります。
仮に症状固定に至っていたとしても、健康保険を使用して治療を続けることはできます。
保険会社の対応に疑問を感じたら、弁護士へご相談ください。

Q2.保険会社から賠償金額の提案が来たのですが、難しい用語が多くてよく分かりません。どういう意味なのか教えてもらうだけの相談では受け付けてもらえないでしょうか。

保険会社から示される損害賠償項目には、日常生活には馴染みがなく意味が分かりにくいものも多くあります。
用語の意味に関するご質問のみでもどうぞお気軽にお寄せ下さい。
用語はもちろんのこと、今後の保険会社との交渉等適切な解決方法についてもアドバイスをいたします。なお、基本的な用語については「用語解説集」をクリックしてください。

Q3.保険会社から損害賠償額が提示されましたが、説明を聞いても納得できません。どこに相談したらよいでしょうか。費用は、どのくらいかかるでしょうか。

弁護士会の相談センターの交通事故相談をご利用下さい。札幌では、面接での相談と電話相談(電話番号:0120-078325 相談日:毎週月曜日~金曜日 時間:10:00~16:30 ※月曜・水曜は19時まで延長(第5週を除く) 相談料金:無料)がありますが、いずれも、相談だけであれば、料金は無料となっています。なお、弁護士に依頼をされる場合には、着手金、報酬金がかかります。相談だけの利用でも構いませんので、どうぞお気軽にご利用下さい。

Q4.相手方から過失割合が7:3だと言われていますが、納得できません。過失割合というのは、保険会社が決めるものなのですか。

相手方の述べている過失割合はあくまでも相手方の主張に過ぎず、最終的に過失割合を決定するのは保険会社ではありません。
典型的な交通事故の形態について過去の裁判例などを参考に作成された過失割合基準が公刊されており、保険会社はおおむねこうした基準をもとに過失割合を判断していますが、個々の交通事故の具体的な態様によって過失割合は異なってきます。
弁護士にご相談いただければ相手方と過失割合の交渉を行うこともできます。
過失割合についてどうしても合意に達しない場合には、最終的には裁判で過失割合が決まることになります。

Q5.コンビニの前を歩いていたら、駐車場に停まっていた車がバックしてきて衝突しました。私にも過失があると言われたのですが、そんなことがあるのでしょうか。

あなたがコンビニの前の歩道を歩いている際に事故が起きたようなケースでは、あなたの過失は認められないのが原則です。
しかし、歩行者と自動車の衝突事故において歩行者にも過失が認められるケースはあり、具体的な事故態様によって判断されます。
いずれにせよ事故がどのように発生したかによって過失割合は異なりますので、一度弁護士にご相談ください。

Q6.追突事故を起こされ、過失割合は1対9となりました。相手の車の修理費用の一部を私が出さなければならないというのが、納得できません。どういうことなのでしょうか。

交通事故は、当事者の一方だけが100%悪い場合と、程度の差はあれ当事者の双方に非がある場合があります。
双方に非がある交通事故となれば、たとえ1割であっても相手方に損害を与えた原因となったことになりますので、その分は賠償しなければならないのです。
過失割合が1対9ということであれば、相手はこちらに対して損害の9割を支払う義務があることになり、こちらは相手の損害の1割を支払う義務があることになるのです。

Q7.信号のない交差点を直進していたところ、左から来た車が一旦停止せずにぶつかってきました。この場合でも私に過失はあるのでしょうか。

あなたの相談から推察したところ、基本的にはあなたより相手方の過失が大きくなりますが、あなたにも一定の過失が存在する可能性があります。
しかしながら、上記文面だけでは、交通事故の具体的な発生状況が分かりません。過失割合を導き出すためには、あなたや相手方の車両の速度や衝突の仕方などを把握することが必要です。
弁護士にご相談いただければ、具体的な交通事故発生状況をお伺いした上で、過失割合に関する一定の目安をお示しすることが可能です。

Q8.事故から半年経っても、首の痛みが消えません。後遺症の認定を申請したら「非該当」でした。何とかならないでしょうか?

後遺障害等級認定手続は、膨大な案件を迅速に処理することから、書面審査が中心です。
被害者の症状などについて、提出した資料のみでは判断することが困難な場合もあり、不適切な判断もあり得るため、異議申立の制度を設けています。
したがって、後遺障害等級認定で非該当とされたり、予想よりも低い等級が認定され、被害者がこの認定に納得できない場合は、異議申立てをすることができます。一度弁護士にご相談ください。

Q9.私は専業主婦なのですが、事故から2か月間ほとんど家事ができず、家族に手伝ってもらいました。何か補償をしてもらうことはできないのでしょうか。

専業主婦の方も、同居する家族の家事業務に従事していると考えられますので、治療費や慰謝料などのほかに、「家事従事者」としての休業損害を相手方に請求することが可能です。
ただし、あなたが「家事従事者」に該当するか否か、どの程度の家事に支障があったのか、具体的な休業損害額などの点で相手方から争われる可能性がありますので、一度弁護士にご相談ください。

Q10.事故から約1か月間仕事を休んだのですが、その半分は有休を使いました。その分は休業補償を受けられないのでしょうか。

有給休暇をとってしまうと、現実に減給は発生せず、加害者からの休業損害(補償)が受けられないのではないかと心配される方がいます。しかしながら、交通事故が発生しなければ、有給休暇は娯楽などのほかの理由で使用できたにもかかわらず、交通事故という予想外の出来事で有給休暇を消化をせざるを得なかったとも言えます。現在、交通事故の実務では、有給休暇を使用した場合でも休業損害が発生したこととし、補償をすることになっています。

Q11.私は、息子と建設関係の事業をしていたのですが、事故から約半年間仕事ができず、その間にお客さんが離れてしまいました。売上が激減してしまった分の補償はされないのでしょうか。

通常、交通事故によって収入が減ったという場合には「所得」を基準として休業補償を考えることになるので、事業者の方の「売上」が直ちに補償されるものとは考えられていません。
もっとも、「売上」が全く補償されないわけではありません。過去の裁判例では、事故により廃業を余儀なくされた場合の費用や、事故により長期休業した影響で客離れが生じて売上が減った場合の減収などが、損害として認められたこともあります。

Q12.10数年来愛用してきた車が事故で大破してしまいました。車がないと通勤できません。修理代のほかに、評価損や代車料を請求できるでしょうか。

代車料が認められるためには、①実際に修理や買い換えが必要となったこと、②修理や買い換えまでの間に代車を使用する必要があること、③現実に代車を使用したことが必要です。例えば、セカンドカーを持っていた場合などは、②の必要性を満たさないことになって代車料が認められない可能性が高いと考えられます。
しかし、逆に言えば、この①~③の条件を満たせば、代車料は認められるものだということができます。

評価損も認められることはあるのですが、少し条件が厳しくなります。
評価損は、比較的高級車や外国車、ヴィンテージカーや限定モデルなどの場合に認められることが多く、通常の国産車や初度登録から比較的長期間経過している車の場合は認められにくくなる傾向があります。また、車の主要な構造部分が損傷したかどうかという点も影響があり、主要部分に近い損傷ほど認められやすくなる傾向があります。

Q13.私は音楽の仕事をしていて、バンにアンプやキーボードを載せて運んでいます。追突事故に遭った際、機材が壊れて約100万円の買換費用がかかりました。これは補償してもらえますか。

交通事故に遭った場合、修理代などの自動車の損害だけでなく、自動車に積まれていた積み荷などについても一定の範囲で賠償を受けることが出来ます。ですから、アンプやキーボードについても賠償を受けることは可能です。
もっとも、積荷の場合も車と同様、購入から一定年数が経過していた場合には、その分時価額の評価が下がることがあるため、新品の買換費用全額が認められるとは限りませんので、注意が必要です。

Q14.私は会社員でしたが、事故で怪我をして、その治療が長引いたために勤務先を解雇されてしまいました。給料がなくなって生活に困っています。何か補償してもらえないでしょうか。

休業損害の請求が考えられます。解雇され、無職となった以降も、受傷が原因で現実に稼働困難な期間は休業期間とされ、その間の休業損害は補償されると考えられています。稼働可能となった後も、なかなか新たな就職先が得られなかった場合、転職先を得るための相当期間まで、休業損害を認めたケースもあります。

Q15.夫が事故で下半身不随となりました。住居をバリアフリーに改造するためには、1500万円の費用がかかります。これは補償してもらえないでしょうか。

介護を要する障害等級になった場合、バリアフリー住宅に改造する費用についても、加害者に対する損害賠償請求が認められることが多いです。
ただし、改造費の一部しか、賠償が認められないという場合もあります。この場合は、改造の必要性や支出額の相当性(不要な高級仕様になっていないか等)、被害者以外の家族が改造で利益を享受するかなどが考慮されて、賠償額が決まります。

Q16.東京の大学に通っている娘が交通事故に遭い、入院しました。心配で何度か仕事を休んで東京の病院まで見舞いに行きました。この費用は賠償してもらえますか。

娘さんの傷害の程度によります。重篤な脳損傷や脊髄損傷、上肢・下肢の骨折などで身体の自由がきかない状態の場合には、近親者の付添費用を認める裁判例が多いです。この場合、入院付添費として、裁判では、1日5500円~7000円程度が認められています。入院付添費が認められる場合、近親者が入院先に行く交通費やホテル代についても賠償が認められたケースもあります。

Q17.後遺症の認定を受けると、慰謝料や逸失利益が支払われると聞きました。詳しく教えてください。

後遺症(後遺障害)が残ったということは、それによって、精神的な苦痛を被るとともに、将来の労働が一定の割合で制限されることになりますので、後遺障害の程度に応じて慰謝料と逸失利益を請求することができます。後遺障害は、法令で重い方から順に1級から14級までの14段階の等級に分けられています。後遺障害の等級認定手続は、医師の後遺障害診断書に記載された診断内容やX線画像等に基づき、損害保険料率算出機構の調査事務所が調査し、後遺障害の有無やどの等級に該当するかについての認定がなされます。一般的にはここで認定された等級に応じて慰謝料額や逸失利益が支払われますが、等級ごとに慰謝料額や逸失利益が異なります。つまり、重い後遺障害が残ればその分慰謝料は高額になり、また、逸失利益も高額になる傾向があります。逸失利益は、労働能力喪失率(労働能力が失われた割合)と就労可能年数(あと何年働くことができたか)に応じて算出されるので、重い後遺障害が残り労働能力喪失率が高くなれば、就労可能年数が同じだとしても、逸失利益は高額になるのです。

Q18.脊髄に損傷が残り、後遺症の認定を受けたのですが、事故までの半年間無職だったため、逸失利益が認められないと言われました。後遺症のため仕事を見つけるのも難しく、どうしたら良いのか分かりません。

無職になった後に就職活動をするなど働く意思はあったのでしょうか。また、無職になる前には一定程度の収入はあったのでしょうか。
確かに、逸失利益の算定の基礎となる基礎収入は、被害者の事故前の収入を前提としますので、無職だった場合には基礎収入が0円となってしまいます。
しかし、無職であった場合でも、年齢、健康状態、資格、特技、無職になった理由や家族の状況、無職になる前の収入等を総合的に考慮し、事故に遭わなければ相当程度の収入を得ていた蓋然性がある場合には、逸失利益が認められるのが一般的です。その場合、以前の収入程度の年収額を基礎としたり、賃金センサス程度の収入を得られる蓋然性がある場合には賃金センサスを基礎として逸失利益が算定されます。もっとも、無職の期間が長期間に及ぶ場合やそもそも働く意思がないなどの事情が認められる場合には、逸失利益の算定の基礎となる収入額について、賃金センサスを相当程度減額して算定した裁判例もあります。

Q19.後遺症の14級9号という認定を受けたのですが、保険会社からは逸失利益は2年分しか認めないと言われています。そういうものなのでしょうか。

後遺症の等級が重度の場合には、後遺症が一生涯続くと認定される場合もありますが、例えば、頸椎捻挫などで14級9号に認定された場合には、症状固定の後でも徐々に症状が緩和することもあるので、逸失利益の計算上は、一般的には、2年から5年程度の期間で算定されることが多いようです。ただ、裁判例の中には、それ以上の期間の逸失利益が認められたものもあります。ですので、14級9号に認定されたからと言って、一律に逸失利益が認められる期間が決まるものではなく、事故態様や被害者の個別の症状、治療経過、労働への影響等に鑑み、個別に算定することになります。

Q20.内縁の夫が交通事故で亡くなってしまいました。夫婦ではないので慰謝料は出ないといわれたのですが、仕方ないのでしょうか。

内縁関係にある夫が亡くなった場合、内縁の妻には相続権がありませんので夫自身の損害賠償請求権を相続することはできません。 しかし、内縁の夫を失ったあなたも精神的にショックを受け、また今後の生活費などの扶養が受けられないという固有の損害を被っているのです。
ですから、あなた自身の固有の損害として①慰謝料、②逸失利益(内縁の夫が死亡していなければ受けられたであろう生活費)を請求することができます。

Q21.保険によっては、弁護士費用を支払ってくれる特約がついていると聞きました。どこを見れば分かりますか。

自動車保険会社は、あなたが加害者となって賠償しなければならないケースであれば示談を代行してくれます。
しかし、あなたが被害者となり、加害者に対して損害賠償請求をしなければならない場合、基本的にはあなた自身が交渉や訴訟をしなければなりません。
そんなときに、あなたが加入している自動車保険に弁護士費用特約をつけていれば、限度額の範囲内で弁護士費用を支払ってくれます。
あなたが加入されている保険証券に記載されていますが、よくわからない場合は保険会社・代理店に自分が弁護士費用特約をつけているか確認されると良いでしょう。

Q22.弁護士に頼んで賠償額が上がっても、弁護士費用の方が多くかかって損をすると聞いたことがあります。本当ですか。

ケースによってはあり得ます。
弁護士に依頼した場合に支払う費用は、①実費(交通費・裁判所へ納める費用など)、②事件を受ける際に頂く着手金、③受け取った賠償金に生じる報酬があります。①・②については一番最初に必要になる費用です。
もちろん、賠償額が高額の場合には損をするということはほとんどありません。
しかしケースによっては、賠償額が①及び②を上回らず費用倒れになることもあります。
ですから、最初に相談される際に、どの程度賠償額が見込まれるのか、損しないかどうかを弁護士に確認されるとよいでしょう。

Q23.交通事故で裁判まで起こすというのは、あまりないことなのでしょうか。裁判にしてしまうと、何度も裁判所に行ったり、大変な手間がかかるのではないでしょうか。

交通事故で訴訟になるのは、全体の5%程度とも言われています。正確な数字ではないかも知れませんが、裁判よりも当事者間の話し合いで解決するケースの方が圧倒的に多いことは間違いありません。
しかし、裁判になるケースも当然にあります。特に、後遺障害の認定や過失割合に争いがある場合などは裁判になることもあります。裁判を起こした場合、基本的には弁護士が裁判所に行って手続きを進めていくので、弁護士に依頼をした場合には、事故の当事者が何度も裁判所に出向く必要はありません。しかし、診断書などの証拠の収集には協力していただくことになりますし、裁判所の法廷でお話ししていただくこともあり、負担となってしまうことは否定できません。

Q24.事故に遭ったのですが、相手が任意保険に入っていません。私はどうすればよいのでしょうか。

被害者という立場においては、加害者に対して治療費などを請求する権利があり、また、加害者にはそれらを支払う義務があるので、加害者に請求することが可能です。しかし、加害者に資力がない等の理由で支払ってもらえない場合には、自賠責に対して被害者請求をしていく方法があります。また、ご自身の保険に無保険車傷害保険であるならば、本来加害者が支払うべき治療費等を肩代わりしてもらえる可能性があります。

いすれにせよ、十分な補償が得られない場合には、弁護士に依頼するなどして、加害者に対して裁判等で請求していくことをお勧めします。なお、ご自身の保険に弁護士費用特約が付いている場合は、弁護士費用は保険会社が負担してくれます。

Q25.息子が交通事故を起こしたときに、相手に「全責任を負う」という内容の念書を書かされてしまいました。これは有効なのでしょうか。

息子さんが事故の全責任を負うことが、公序良俗に反する(社会的にみて相当でない)と言える場合には、念書の無効を主張することが可能と思われます。
また、息子さんが念書を書いた当時、未成年者であった場合や、事故の相手方に脅されて念書を書いたという場合には、念書でなした意思表示を取り消し、無効にすることが可能です。

仮に、念書が有効であったとしても、息子さんが責任を負うべき損害の範囲は、当該事故と相当因果関係の認められる損害(社会通念上相当と認められる損害)に限られます。相手方が過大な賠償を求めて来る場合には、債務不存在確認訴訟を提起して、息子さんが負うべき責任の範囲を裁判で確定させるべきです。

Q26.事故の後1週間くらいで、加害者と示談書を交わしてしまったのですが、その後手足に痺れを感じるようになりました。もし入院するようなことになっても、もう示談は取り消せないのでしょうか。

一度成立した示談は取り消せないのが原則ですが、示談成立当時、予想出来なかった後遺症であれば賠償請求が可能です。
今回のケースでは、手足の痺れが出てきたことが示談成立時に当事者の予想することができなかった事態の変化と認められるならば、改めて賠償請求をすることができる可能性があります。ただし、いったん成立した示談の取消、再示談には困難が伴うことが多いですから、示談の前には弁護士に相談されることをおすすめします。

Q27.追突事故を起こしてしまったのですが、加害者の友人だという人が、示談金の交渉をすると言って、仕事場や自宅に何度も押しかけて来ます。保険会社を通してくださいと言っても聞きません。どうしたらよいでしょうか。

相手が再三の要求にも応じないのであれば、弁護士に示談交渉を依頼するのが良いでしょう。加害者やその代理人との交渉は弁護士があなたに代わって行いますので、ほとんどの場合、加害者等があなたに直接連絡してくることはなくなります。

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