死刑執行に関する会長声明
2014年6月26日、大阪拘置所において、1名に対して死刑が執行された。谷垣禎一法務大臣による5度目の死刑執行であり、合計9名に対し死刑が執行されたことになる。
当会は、死刑制度の廃止について全社会的議論が尽くされるまで死刑の執行を停止することを求める声明をこれまで繰り返し発してきたが、議論の前提となる死刑制度に関する情報の公開に改善はみられず、全社会的議論もなされないまま、死刑の執行が続いていることは極めて遺憾であり、強く抗議する。
2014年2月17日、裁判員経験者20名が、死刑執行を停止し、死刑制度の情報公開を徹底して、国民による議論を促すよう求める要請書を谷垣法務大臣に提出した。政府は、世論調査の結果、国民の8割以上が死刑制度を支持しているとするが、実際に裁判員を経験した一般市民のなかには、日本の死刑制度の秘密主義に疑問を持っている人もいる。
2014年3月27日には、静岡地方裁判所が袴田巌氏の第二次再審請求事件について、再審を開始し、死刑及び拘置の執行を停止する決定をした。この袴田事件の再審開始決定は、日本の刑事司法制度の問題点を厳しく指摘するものであり、再審開始決定を契機に、死刑制度に関する国民の関心は高まっている。
政府は、こうした一般市民の疑問・関心に答えるべく、死刑制度に関する情報を積極的に開示し、死刑制度に関する全社会的議論をただちに開始すべきである。裁判員裁判では、現に、一般市民が死刑判断を余儀なくされている。政府は、もはや死刑制度の秘密主義に固執し、死刑の是非に関する全社会的議論を回避することはできない。
当会は、今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに、あらためて死刑の執行を停止し、死刑制度全般に関する情報を広く国民に公開し、死刑制度の廃止について全社会的議論を直ちに開始することを求めるものである。
2014(平成26)年6月27日
札幌弁護士会
会長 田村 智幸