特定秘密の保護に関する法律の施行に抗議し、同法の廃止を求める声明
- 本日、特定秘密の保護に関する法律(秘密保護法)が施行された。
- 本法律が、基本的人権を侵害するとともに、民主主義を軽視し、憲法上の原理をないがしろにするものであることは、当会が2012年3月23日に公表した「秘密保全法制定に反対する会長声明」及び2013年11月21日に公表した「特定秘密の保護に関する法律案の制定に反対する会長声明」、2014年5月28日の当会総会における「特定秘密の保護に関する法律の廃止を求める総会決議」などにおいて明らかにしてきた。
すなわち、本法律には以下の問題がある。①行政機関の長が指定する「特定秘密」の範囲がその法文上、広範、不明確であり、その結果、国民が国政に関する重要な情報から遠ざけられることになりかねず国民主権原理が形骸化する。②「特定秘密」の漏えい行為や「特定秘密」の取得行為のみならず、これらの未遂や共謀、独立教唆又は扇動をも処罰するなど処罰範囲が極めて広範である。このため、国政に関する情報について国民がアクセスすることや公務員がこれを外部に発する行為を萎縮させる可能性が大きく、また報道機関による取材行為を刑罰によって萎縮させ、取材の自由・報道の自由を実質的に失わせる。ひいては民主主義の前提である国民の知る権利を侵害する。③「適性評価」の名のもと「特定秘密」の取扱をする公務員や民間労働者に対する身辺調査を行うとされ、プライバシー権侵害のおそれ、ひいては個人の政治活動や思想信条にまで踏み込む調査がなされる危険性さえはらんでいる。
その後本年10月に、政府は、本法律の施行令や運用基準を閣議決定したが、これらによっても上記に述べた問題点は何ら是正されておらず、かえって、このような小手先の運用では本法律の持つ本質的な危険性を払拭することはできない。 - 本法律に反対する市民の声は、本法律案審議中の世論調査や近年まれな大規模のデモ行進や街頭行動、国会議員への要請行動などとして現れていたところである。さらには、本法律成立後も、廃止や凍結を求める市町村議会決議が相次いでおり、当会の把握するところでは、北海道内の68市町村議会がかかる決議を行っている。
- 以上のような本法律の重大な問題点や市民の反対の声にもかかわらず、本日、本法律が施行されたことに対し、当会は強く抗議する。
- 本法律の施行による影響は直ちには見えにくいであろうが、本法律は、先に述べたその性質上、国民の気付かないところで憲法の国民主権原理を蝕んでいくことが容易に想定される。そのような事態は防がなくてはならない。
当会は、日本国憲法の基本理念である国民主権原理と基本的人権擁護のため、今後も本法律の危険性に対し警鐘を鳴らし続け、本法律廃止の旗を掲げ続ける。
2014年12月10日
札幌弁護士会
会長 田村 智幸