声明・意見書

司法試験合格者数を直ちに減員することを求める会長声明

 2023(令和5)年11月8日、本年(令和5年)度司法試験の最終合格者数が1781人と発表されました。前年度(1403人)に比べ、378人も増加したことになります。
 
 このように司法試験合格者数が大幅に増加したのは、本年度の司法試験受験者数が3897人であり、前年度(3082人)から846人増加したことによるものと思われます。また、かかる受験者数の増加は、本年度から在学中受験資格が追加され、同資格に基づく出願者が1140人(最終年次在籍者の68.2%)いたことによる過渡的なものとも考えられます。
 しかしながら、当会は、これまでも司法試験合格者数の減員を求めてきたところであり、本年度の司法試験の最終合格者数が大幅に増加したことは、現状の弁護士の供給過多による弊害をさらに増大させ、法曹制度そのものを崩壊させかねないものであって、極めて遺憾です。
 また、当会は、これまで、受験者数が減少する中で倍率が下降するという状況について、1500人程度の司法試験合格者輩出という上記目標に過剰に配慮しているとの懸念を指摘してきました。本年度は、上記の通り司法試験受験者数が増加しましたが、合格者数も大幅に増加した結果、その倍率は2.21倍となり、既習課程修了者のみの受験であった平成18年度を除き過去最低の倍率(2.20倍)であった昨年度とほぼ同じ低倍率となりました。
 政府の法曹養成制度改革推進会議は、2015(平成27)年6月30日、法曹人口の在り方について検討結果を取りまとめ、「司法試験合格者数でいえば、(中略)1500人程度は輩出されるよう、必要な取組を進め」るべきとする一方で、「輩出される法曹の質の確保を考慮せずに達成されるべきものでない」という留意事項も付しており、かかる留意事項に照らしても、極めて問題があると言わざるを得ない状況が続いています。
 そもそも、長年にわたり裁判官及び検察官の採用人数が抑制されている現状では、司法試験合格者の大多数は、弁護士登録を申請することとなります。弁護士人口は、初の法科大学院修了者が卒業した15年前の2006(平成18)年3月31日時点では2万2021人であったものが、2023(令和5)年11月1日時点では4万4783人となっており、未だ増員が続くことに変わりはありません。
 これに対して、裁判所の民事事件新受件数は、2009(平成21)年をピークに現在に至るまで減少傾向は続いており、現時点でこれが増加する見込みは乏しい状況にあります。さらに、わが国の人口は少子高齢化が進行し、今後ますます減少していくことが見込まれています。これに伴い、中長期的にはわが国の紛争総数も減少していくものと考えられます。仮に今後において司法基盤の整備等により新たな法的需要が喚起されうるとしても、そうした法的需要の増加が人口減少に伴う法的需要の減少を補うに足ると判断すべき客観的かつ明確な根拠は見当たりません。このような中、弁護士人口増加のペースを速めることは、ますます弁護士の供給過多を招くことになります。
 当会は、2011(平成23)年11月29日開催の臨時総会において、政府に対し、年間1000人程度を目標に司法試験合格者数を段階的に減少させ、その実施状況等を検証しつつ、さらに適正な合格者数を検討することを求める決議を採択しています。また、上記決議から10年以上が経過し、当会においてもあらためて検証を行い、2021(令和3)年3月31日付「法曹人口のあり方についての検証に関する提言書」を公表いたしましたが、我が国全体の人口減少や過疎化が加速する一方、現在の増員ペースを維持すべき現実的で具体的な需要が顕在化していないこと、仮に合格者数を1000人としても弁護士数の増加は続く見込みであることなどを踏まえ、現在も、上記決議を変更すべき状況にはないと考えています。もとより、当会は、引き続き過疎地への司法サービスの提供や司法基盤の整備等に取り組んでいく所存です。
 そこで当会は、引き続き政府に対し、司法試験合格者を大幅に減員するよう強く求めます。

2023年(令和5年)11月21日
札幌弁護士会
会長 清水 智

その他のページ