個人再生手続き
個人再生手続きとは?
債務の支払いが困難になって、自己破産の申立を検討しなければならなくなった方について、裁判所の手続きを使って、債務額を大幅にカットしてもらい、将来の収入によって、債務額を原則3年間で分割返済して債務を整理する方法です。
誰でも使える手続きですか?
- 債務額が住宅資金貸付債権等(住宅ローンや税金等)等を除き、債務額が5000万円以下の方で、予定された返済期間中にわたって、給料等の収入を得る見込があり、返済予定額をきちんと支払えると見込まれる人であれば、この手続きを利用することができます。
- 個人再生手続きには、2種類あり、個人事業主は、「小規模個人再生手続」を、サラリーマンや年金生活者等のように、定期定額の収入を得る見込みのある方は、「給与所得者等再生手続」でも、「小規模個人再生手続」でも使うことができます。ただし、以前に、一度、自己破産等の法的な債務整理手続きを取った方については、一定の期間が経過するまでは、「給与所得者等再生手続」は利用できません。
- 2種類の手続きは、支払総額の算定基準や債権者からの意見の「聞き方」などの点で、大きな違いがあります。手続きの選択は、きわめて重要な分岐点となりますので、手続に習熟した弁護士にぜひ、ご相談下さい。
どんな種類の債務でも、カットされるのですか?
- 税金、健康保険料、罰金はカットされません。税金については、分割納付の手続きをとってください。罰金は、納付時期の延期申請をしてください。
- 住宅ローンは、カットされません。しかし、この手続きのなかで、一定の条件を満たせば、住宅ローンの返済期間を延長するなどの条件変更によって、月額の返済額を減らすこともできます。
- そのほか、養育費や慰謝料等の損害賠償債務は、特殊な取り扱いがなされますので、弁護士によくご相談ください。
自動車ローンを返済中ですが、自動車は引き揚げされてしまうのでしょうか?
ローン返済中の自動車は、原則として、引き揚げされてしまいます。ローン会社が自動車を引き揚げ、自動車を処分又は価格を査定して、その金額を自動車ローンに充当し、残った債務額がカットの対象となります。
しかし、自動車を失ってしまうと、仕事ができなくなるなど、自動車がどうしても必要な場合には、厳格な条件のもとに、例外的に、自動車のローンを約束どおり支払いながら、自動車をそのまま使用し続けることが認められる場合もあります。その点はよく、弁護士にご相談下さい
債務額が大幅にカットされるといっても、どれくらいカットされるのですか?
小規模個人再生手続と給与所得者等再生手続とでは、算定基準が違うので、一概にはいえませんが、次のような2つの例でご説明します。
例えば、
- 債務額が450万円
- 債務総額が600万円
総財産(預貯金、生命保険等の解約返戻金、仮に、今、自己都合退職した場合の退職金の8分の1の額等の合計)が
(1) 80万円のケースと(2)130万円のケースで、
小規模個人再生手続を利用し、債権者の人的又は額的過半数が反対しないとき、
(1) 総財産が100万円以下の場合(80万円)は、支払総額は100万円に減額になり、450万円-100万円=350万円がカットされます。
3年間の月額の支払額は、100万円÷36回≒27、778円です。
(2) 総財産が100万円以上の場合(このケースでは130万円)は、支払総額は130万円(総財産の金額)に減額になり、450万円-130万円=320万円がカットされます。
3年間の月額の支払額は、130万円÷36回≒36、112円です。
小規模個人再生手続を利用し、債権者の人的又は額的過半数が反対しないとき、
(1) 総財産が120万円(600万円÷5=債務額の5分の1)以下の場合(80万円)は、支払総額は120万円(債務額の5分の1の額)に減額になり、600万円-120万円=480万円がカットされます。
3年間の月額の支払額は、120万円÷36回≒33、334円です。
(2) 総財産が120万円以上の場合(130万円)は、支払総額は130万円(総財産の金額)に減額になり、600万円-130万円=470万円がカットされます。
3年間の月額の支払額は、130万円÷36回≒36、112円です。
大幅にカットしてもらった債務額を、原則3年間で返済するということですが、返済期間を4年間とか6年間とすることはできるのでしょうか?
「特別な事情」があれば、返済期間を5年間(60回払い)まで延長することができます。
「特別な事情」とは、例えば、子供が中学生で、これから、教育費がかさんでいくので、3年間(36回払い)では、月額の返済財源が足りないが、4年間(48回払い)にすれば、十分に返済が可能というケースなどが考えられます。
インターネットで、司法書士や東京方面の弁護士事務所が、さかんに「個人再生手続きで債務整理をしましょう」と宣伝していますが、札幌弁護士会の弁護士に個人再生手続きを依頼する場合と比較して、何か違いがありますか?
費用の点での大きな違いが考えられます。
「札幌弁護士会多重債務解決センター」では、センターで事件の依頼を受ける弁護士には、弁護士費用を30万円+消費税(標準的限度額)以下にしてください、分割払いで事件を引き受けてくださいとお願いしています。
そして、札幌弁護士会多重債務解決センターに登録している弁護士は、いずれも、実務研修を義務づけられており、個人再生手続きに『習熟している弁護士』ですので、申立代理人になって、札幌地方裁判所に個人再生手続開始の申立をすると、裁判所は、申立代理人の弁護士の資質及び能力を信頼し、事案によりますが、通常は、「個人再生委員」を選任することなく、その弁護士に主導的に手続きを進めさせます。
しかし、司法書士に書類作成を依頼した場合、あるいは、札幌地方裁判所の個人再生手続きの実務的運用について習熟していない弁護士に事件を依頼した場合には、手続きの適正かつ迅速な進行を確保する必要から、裁判所の監督権能を補佐するため、手続きに習熟した札幌弁護士会所属の弁護士を「個人再生委員」に選任します。個人再生委員が選任される場合には、裁判所に、現金で20万円の予納金を納めなければなりませんので、その分、余計に費用がかかることになってしまいますし、個人再生委員から、収入及び財産状況に関する事情聴取を受けることになります。手続きの段階ごとに、個人再生委員が調査に基づき、裁判所に意見を述べることになっています。
ですから、札幌地方裁判所へ個人再生手続きの申立をしようと考えている方は、札幌弁護士会多重債務解決センターで相談し、手続きに習熟した弁護士に事件を依頼すれば、余計な費用もかからず、第三者に干渉されることなく、自分が信頼した弁護士に、手続きを進めてもらうことができるでしょう。