声明・意見書

死刑執行に関する会長声明

 4月26日、東京拘置所において、2名に対する死刑の執行が行われた。自民党に政権が交代した後の2回目の執行であるが、谷垣法務大臣が前回の執行後わずか2か月余りで死刑を執行したことは、極めて遺憾である。

 日本政府は、これまでも国連等の関係機関から繰り返し、死刑の執行を停止し、死刑制度の廃止に向けた措置をとるよう勧告を受けているところ、日本弁護士連合会は、平成23年第54回人権擁護大会において、「罪を犯した人の社会復帰のための施策の確立を求め、死刑廃止についての全社会的な議論を呼びかける宣言」を採択し、また、本年2月12日、谷垣法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要望書」を提出した。同要望書では、死刑制度に関する当面の検討課題について国民的議論を行うための有識者会議を設置し、死刑制度とその運用に関する情報を広く公開し、死刑制度に関する世界の情勢について調査のうえ、調査結果と議論に基づき、今後の死刑制度の在り方について結論を出すこと、そのような議論が尽くされるまでの間、すべての死刑の執行を停止することなどを求めていた。また、同要望書提出の直後である2月21日に3名に対する死刑執行がなされた際も、日本弁護士連合会並びに当会及び多数の弁護士会は、死刑執行に強く抗議するとともに、死刑制度に関する情報を公開し、国民的議論を尽くすまでの間、死刑の執行を停止するよう求めた。

 しかるに、今回の執行は、いまだ死刑制度に関する在り方や全般的な問題点について全社会的議論がなされていないにもかかわらず、死刑執行に対する抗議や死刑執行停止を求める多くの意見を再び無視して強行されたものであり、到底容認することができない。

 当会は、今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに、あらためて死刑の執行を停止し、死刑制度全般に関する情報を広く国民に公開し、死刑制度の廃止について全社会的な議論を直ちに開始することを求めるものである。

2013年5月1日
札幌弁護士会 会長  中村 隆

その他のページ