声明・意見書

死刑執行に関する会長声明

 2014年8月29日,東京拘置所及び仙台拘置支所において,2名の死刑確定者に対して死刑が執行された。谷垣禎一法務大臣による6度目の死刑執行であり,同法務大臣は就任以来,合計11名に対して死刑の執行を命じたことになる。
当会は,国民的議論が尽くされるまでの死刑の執行を停止することを求める声明を繰り返し公表してきたが,公の議論がなされないまま,死刑執行が継続されていることは,極めて遺憾であり,強く抗議する。

 2014年3月27日,静岡地方裁判所は袴田巌氏の第二次再審請求事件について,再審を開始し,死刑及び拘置の執行を停止する画期的な決定をした。

 本年7月には,国際人権(自由権)規約委員会から,「死刑の廃止を十分に考慮」すべきとする勧告がなされたほか,日本の死刑制度には,死刑判決に対する必要的な上訴制度がないこと,再審請求に執行停止効がないこと,死刑執行の事前告知がないこと等,手続面において,国際人権基準に照らし大きな問題があることが指摘されるとともに,死刑制度とその運用に関する情報開示が不十分であるとして,その秘密主義が批判されたばかりである。

 我が国では,死刑事件について4件の再審無罪判決が確定し,近時は,死刑事件ではないが,足利事件,布川事件,東電OL殺人事件について再審無罪判決が言い渡されている。袴田事件は,現在においても,えん罪による誤った死刑執行の危険が存在することを明らかにしたものであるが,数々のえん罪事件の存在にも関わらず,誤判原因の解明とその防止の為の抜本的対策は講じられていない。

 政府は,世論調査の結果,国民の8割以上が死刑制度を支持しているとするが,死刑制度とその運用に関する情報を十分に開示し,国民的議論に供されていることが不可欠の前提であるところ,死刑制度に関する情報公開はほとんど進んでいない。

 裁判員裁判では,現に,一般市民が死刑判断を余儀なくされている以上,死刑制度とその運用に関する情報を積極的に開示し,死刑制度に関する全社会的議論をただちに開始することは国の責務である。

 当会は,今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに,あらためて死刑の執行を停止し,死刑制度全般に関する情報を広く国民に公開し,死刑制度の廃止について全社会的な議論を直ちに開始することを求めるものである。

2014年(平成26年)9月2日
札幌弁護士会
会長  田村 智幸

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