声明・意見書

司法試験合格者を直ちに減員することを求める会長声明

 本年9月9日、2014(平成26)年度司法試験の最終合格者数が1,810人であると発表された。司法試験の最終合格者数は、本年度は昨年度に比べ239人減少し、従来から比較すれば減少に向けた舵を切った。

 しかしながら、司法試験合格者のうち、裁判官及び検察官の採用人数が抑制されている中で、大多数が弁護士になる結果、弁護士人口は、2007(平成19)年では23,119人であったものが、本日現在では35,008人になっており、その増加のペースは、あまりにも急激である。

 当会は、2011(平成23)年11月29日開催の臨時総会において、弁護士人口の急増が現状の法的需要を上回るものであり、また、司法修習生の就職難や弁護士としてのOJT(on the job training)不足により、法律実務家として必要な技能や倫理を十分に会得していない弁護士が社会に大量に送り出されるおそれなど様々な弊害を生じさせている現状を指摘し、政府に対し、年間1,000人程度を目標に司法試験合格者数を段階的に減少させ、その実施状況等を検証しつつ、さらに適正な合格者数を検討することを求める決議を採択した。
 裁判所の新事件数は2009(平成21)年をピークに現在に至るまで減少の一途であり、これが増加する見込みはなく、法的需要の見通しも誤っていたことも明らかになった。

 他方で、総務省は「法曹人口の拡大及び法曹養成制度の改革に関する政策評価書」(2012(平成24)年4月20日付)において、現状では2,000人規模の増員ペース(年間合格者数)を吸収する需要は顕在化しておらず、現在の需要規模と増員ペースの下、弁護士の供給過多となっていると指摘していた。また、法務省が設置した法曹養成制度検討会議が2013(平成25)年6月26日に発表した「取りまとめ」においても、年間合格者数を3,000人程度とすることを目指すべきとの数値目標を掲げることは現実性を欠くとの評価がなされ、その結果、同年8月には政府は3,000人を目標とした閣議決定を撤回するに至っていた。
 この閣議決定の撤回は、既に2,000人を前提とした合格者数の下での弊害を自認したものと言わざるを得ず、遅滞なく司法試験合格者数を減少させるべきであったが、減少の幅は、239人にとどまり、現状の弊害を解消させるに至らず、このままでは法曹制度そのものを崩壊させかねないものであり、極めて遺憾である。

 当会は、政府に対し、次年度以降の司法試験合格者数につき、年間1,000人程度を目標に早急に減少させるよう強く求める。

2014(平成26)年9月9日
札幌弁護士会
会長  田村 智幸

その他のページ