声明・意見書

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特定秘密の保護に関する法律の廃止を求める総会決議

決議の趣旨

当会は、特定秘密の保護に関する法律(平成25年法律第108号)を、直ちに廃止するよう求める。

決議の理由

  1. はじめに
    特定秘密の保護に関する法律(「特定秘密保護法」)は、2013年12月6日に参議院の議決を経て成立し、同月13日に公布された。同法律は、公布から1年以内に施行されることとなっている。
    しかし、本法律は以下に述べるとおり、日本国憲法に定められる基本的人権を侵害し、国民主権を形骸化するものであるから、施行することなく直ちに廃止されるべきである。
  2. 知る権利の保障を侵害し、国民主権原理にもとること
    国民主権の実現のためには、国政に関わる重要な情報を知る権利が保障されることが不可欠である。
    ところが、本法律において保護の対象となる「特定秘密」は法文上広範かつ不明確であることに加え、秘密指定の有効期間も最長30年という原則に大幅な例外を加え、秘密指定の半永久化が許容されている。
    その結果、「特定秘密」の恣意的な指定をもたらし、本来当然公開されるべき情報が長期間又は半永久的に隠ぺいされるおそれが否定できず、国民の知る権利を侵害し、国政参加を著しく阻害する。
    また、行政機関は「特定秘密」につき国会の国政調査権行使を拒むことができ、国会議員も「特定秘密」を漏えいすると処罰されるため、国会議員が国民の代表者として十全に活動することが阻害され、国民主権が形骸化する危険性が高い。
    本法律審議過程の最終段階において「第三者機関」を設置する構想が出されたが、ここで検討されている第三者機関は、いずれも行政機関に設置されるか、総理大臣の諮問機関としての位置付けにすぎないものであり、秘密指定の適正を何ら担保するものではない。
  3. 処罰範囲が広範かつ不明確であること
    本法律は、「特定秘密」の漏えい行為や「特定秘密」の取得行為を処罰対象とするが、そもそも「特定秘密」が広範かつ不明確であることから、「特定秘密」の漏えい行為や取得行為の範囲も曖昧である。
    さらに過失犯や未遂犯、共謀、独立教唆、扇動も処罰の対象とされているため、処罰範囲は極めて広範であることに加え、法定刑も最長で懲役10年と過重である。
    したがって、罪刑法定主義に反するばかりか、刑罰の広範化・重罰化による市民・メディアの萎縮行為が強く懸念され、国民による国政監視機能を弱体化し、国民主権を空洞化させる。
    「特定秘密」の曖昧さと処罰範囲の広範さは、報道機関による取材・報道の自由を侵害し、表現の自由、集会・結社の自由、学問の自由などの憲法上の諸権利に対する萎縮効果を生じさせる。
  4. プライバシー権を侵害すること
    さらに、本法律は、「特定秘密」の取扱者について、「適性評価」の名のもとに、犯罪・懲戒歴、薬物の濫用又は影響に関する事項、精神疾患に関わる事項、飲酒についての事項、信用状態といった機微にわたるプライバシー情報を調査することを定める。
    これらの調査では、行政機関の恣意的な判断によって個人の政治活動や思想信条などさらに高度のプライバシーに踏み込む調査がなされる危険性が高く、プライバシー権や思想信条の自由を侵害するおそれがある。
  5. 国際人権水準に適合しないこと
    本法律は、国内ばかりではなく国際社会からも、国際人権水準に照らして問題があるとの批判を受けている。
    本法律は、「情報にアクセスする権利」を明確に規定した「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(自由権規約)に抵触する。
    また、2013年に南アフリカのツワネで公表された「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」(「ツワネ原則」)は、国家安全保障への脅威から人々を保護する措置を危険にさらすことなく、国家の情報への市民のアクセスを保障するための原則を定めるが、本法律はツワネ原則を満たしていない。
  6. 制定過程に問題があること
    本法律は内容のみならず、その審議過程にも極めて問題が多い。
    国会審議においては、法案内容の不備や不明確な点が次々と指摘され、国会内外で本法律について十分な慎重審議を求める声が高まっていた。
    それにも関わらず、政府は衆議院特別委員会での強行採決に引き続き、本会議においても採決を強行し、さらに参議院でも十分な審理時間を経ることがないまま強行採決の愚行を繰り返した。
    これは多数決の前に議論を尽くすことを前提とする代議制、立憲民主主義への明らかな挑戦であり、絶対に認められない。
  7. 本法律が廃止されるべきであること
    当会は、本法律の制定に反対し、市民集会の開催やデモ行進、街頭活動によって本法律の危険性を強く訴えてきた。
    小手先の修正によって本法律のもつ問題を払拭することは不可能であり、本法律は即時に廃止されなければならない。
    むしろ、今なされるべきは、現行の不十分な情報公開法制及び公文書管理法制を改正することにより、情報公開を前提とした市民の熟議によって、より成熟した民主主義社会を実現することである。
  8. 結論
    よって、当会は市民の声を無視して成立した、基本的人権を侵害し、国民主権をはじめとする憲法上の諸原理をないがしろにする本法律を直ちに廃止するよう求める。
    当会は、特定秘密保護法反対運動で大きなうねりとなって示された市民の力の一翼となり、市民と連携して特定秘密保護法の廃止に向けた取り組みを継続していく。
    以上、決議する。

2014年5月23日
札幌弁護士会

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