声明・意見書

日本国憲法施行69周年の憲法記念日を迎えるにあたり改めて安保法制の廃止を求める会長声明

 本日、日本国憲法は、施行から69周年を迎えました。
 かつて、日本は、アジア近隣諸国に対する侵略行為により、多くの人々に対し、言葉で言い表せない辛苦と惨禍を与え、かつ、日本国民に対しても多大な被害を与えました。とりわけ、広島・長崎へ原爆が投下されたことにより、人類が経験したことのない深刻で長期にわたる苦しみをもたらしました。
 日本国憲法は、このような戦争を真摯に反省し、二度と同じ過ちを繰り返さないという決意に基づき制定されました。日本国憲法は、一人ひとりの個人が、かけがえのない存在である(個人の尊厳)との考えから立憲主義・法の支配に則り、国民主権、基本的人権の尊重とともに恒久平和主義を原則として定めています。
 この恒久平和主義のもと、戦後71年目を迎える今日まで、日本は、海外において、ただの一度も、武力の行使により、他国民を殺傷することもなく、また戦争に巻きこまれることなく過ごしてきました。まさに、「平和のうちに生存する」(憲法前文)ことができたのです。
 しかしながら、昨年9月19日、国会において、多くの国民が反対するなか、十分な審議がなされないまま安保法制が成立しました。それは集団的自衛権の行使を容認するなど恒久平和主義に反し、実質的には、憲法改正手続によらずに、憲法9条を改変するものです。
 そして、この安保法制が最初に発動されるのは、北海道内の陸上自衛隊が派遣された南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)と言われていますが、現在、南スーダンは、国連の避難所においてさえ、戦闘により死者が出るような事実上の内戦状態にあると報じられています。
 かかる状況において、南スーダンで、安保法制によって認められた「駆けつけ警護」や安全確保業務等の新たな任務を遂行することは、自衛隊員が他国民を殺傷したり、反対に、自衛隊員の生命身体が危険にさらされる恐れがあり、ひいては、憲法9条の禁止する「武力の行使」にあたることになりかねません。
 そもそも、日本国憲法は、国際社会に対して、武力によらずに国際紛争の解決を図ることにより、世界平和の実現を目指すことを誓っています。今、日本に求められるのは、武力行使の道を進むのではなく、諸国民との協調による紛争解決です。
 当会は、このような問題意識に基づき、昨年5月22日の定期総会において、法案制定に反対する総会決議を採択し、さらに昨年度安保法制の制定、施行に反対する会長声明を4回発し、また、北海道弁護士会連合会並びに旭川、釧路及び函館の三弁護士会とともにパレ-ドを4回行なうなどして、市民の皆さんと共に安保法制に反対の意思を表明し続けてきました。
 日本国憲法施行69周年となる憲法記念日を迎えるに当たって、改めて、昨年9月19日に成立した安保法制を速やかに廃止することを強く求めます。

2016年(平成28年)年5月3日
札幌弁護士会
会長 愛須 一史

その他のページ