声明・意見書

死刑執行に関する会長声明

 2017年12月19日,上川陽子法務大臣の命令に基づき,東京拘置所において2名の死刑が執行されました。第2次安倍内閣以降,死刑が執行されたのは12回目,合計21名に対して死刑が執行されたことになります。

 今回,死刑が執行された2名は,いずれも再審請求をしており,そのうち1名は犯行時少年でした。死刑に直面している者については,再審請求段階,執行段階においても十分な弁護権,防御権が保障されるべきです。また,少年が自ら選択できない生育環境等から人格形成上の大きな影響を受けることからして,死刑判決をもって少年に全責任を負わせることについては,刑事司法の在り方として重大な疑問も提起されています。そのような中,今回の死刑執行を強行したことは極めて遺憾であり,強く抗議します。

 死刑は生命を奪う不可逆的な刑罰であり,誤判の場合,事後的回復が不可能です。死刑再審4事件は死刑の問題点を浮き彫りにするとともに,袴田事件再審開始決定は誤判・えん罪の危険が現実のものであり,誤って死刑を執行するおそれが否定できないことを明らかにしました。

 国際社会においても,死刑廃止に向かう潮流が主流であり,2016年12月19日には,国際連合総会において,「死刑の廃止を視野に入れた死刑執行の停止」を求める決議が,2014年12月に引き続き117か国の賛成により採択されています。また,2016年12月末日現在,死刑を廃止又は停止している国(10年以上死刑が執行されていない国を含む。)は141か国に及び,世界の3分の2以上の国において死刑の執行はなされていません。

 2014年11月に内閣府が実施した死刑制度に関する世論調査では,「死刑もやむを得ない」との回答が80.3%であったものの,そのうち,40.5%は「状況が変われば,将来的には,死刑を廃止してもよい」とし,さらに,仮釈放のない終身刑が導入されるならば「死刑を廃止する方がよい」との回答が37.7%に及んでおり,国民の死刑制度に対する意見も変化しています。

 このような死刑制度が抱える重大な問題性や国際的な死刑廃止への潮流に鑑み,日本弁護士連合会は,2016年10月7日,第59回人権擁護大会において,「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し,その中で,日本において国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきであることを宣言しました。同宣言は,犯罪により生命を奪われた被害者遺族への支援の拡充を求める一方,人権を尊重する民主主義社会における刑罰制度は,犯罪への応報にとどまらず,社会復帰の達成に資するものでなければならないとの観点から,死刑制度を含む刑罰制度全体の抜本的見直しを要請するものです。

 今回の死刑執行は,このような死刑制度を巡る国内外の情勢の変化及び人権擁護大会における宣言を無視するものであり,極めて遺憾です。

 当会は,政府に対し,直ちに死刑の執行を停止し,2020年までに死刑制度を廃止することを求め,今回の死刑執行に対し強く抗議します。

2017年(平成29年)12月20日
札幌弁護士会
会長 大川 哲也

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