「札幌市成年後見制度利用支援事業」の拡充について(要望)
令和元年9月10日
札幌市長 秋元克広 様
札幌弁護士会
会長 樋川 恒一
札幌司法書士会
会長 後藤 力哉
(公社)北海道社会福祉士会
会長 神内 秀之介
(公社)成年後見センター・リーガルサポート札幌支部
支部長 千貝 愛
時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。また、日頃は私共の活動に対しご理解とご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、現在、貴市において実施されている成年後見制度利用支援事業については、同事業の実施要綱が市長申立案件に関するものであるため、申立費用及び成年後見人等に対する報酬の助成対象も市長申立事案に限定されている状況にあります。しかしながら、このような限定は、貴市が果たすべき地域福祉の増進を阻害しかねないものです。
そこで、以下のとおり要望いたします。
第1 要望の趣旨
- 申立費用及び成年後見人等に対する報酬の助成対象を市長申立ての事案に限定せず、本人申立てや親族申立て等を契機とする場合も費用助成の対象となるように、札幌市成年後見制度利用支援事業実施要綱を改正すること。
第2 要望の理由
- 成年後見制度は、認知症高齢者及び、知的障がいや精神障がいがあり判断能力が不十分な人たちの権利擁護を図る社会保障に不可欠の制度でありますが、その利用はいまだ十分とは言えません。そのため、平成28年5月に「成年後見制度の利用の促進に関する法律」が施行され、平成29年3月には成年後見制度利用促進基本計画(以下「基本計画」といいます。)が閣議決定されました。そして、市町村には成年後見制度の利用促進のための具体的な施策が期待されております(同法14条)。
- 成年後見制度利用支援事業については、平成20年3月28日付厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課の事務連絡及び平成20年10月24日付厚生労働省老健局計画課長の事務連絡において、その対象が拡大され、費用の助成は市町村長申立てに限らず、本人申立て、親族申立て等についても対象となり得るものとされています。
これらを踏まえ、基本計画においては、「成年後見制度利用支援事業が市町村長申立てに限らず、本人申立て、親族申立て等を契機とする場合をも対象とすることができること」を市町村において検討することが盛り込まれました。 - 超高齢社会、無縁社会と言われる昨今、成年後見制度はセーフティネットの一つであり、権利擁護の最後の砦でもあります。本人の資産が乏しく、費用負担が困難であるという理由から成年後見制度の利用ができない、という事態はあってはなりません。
そのためには、市町村長申立て(以下「首長申立て」といいます。)に限らず、本人申立てや親族申立て等を契機とする場合であっても、本人の資産の中から費用を支出することが困難な事案について、費用が確保されることが必要不可欠であると考えます。 - 現在、政令指定都市20市のうち、費用助成について首長申立てに限定していることを表明している市は、大阪市、岡山市、福岡市、北九州市、熊本市、札幌市の6市のみであり、札幌市と隣接している石狩市、江別市、北広島市においても、首長申立てに限定しておりません。
また、平成30年度時点において、北海道内179市町村のうち、高齢者については106市町村、障がい者については103市町村が首長申立てに限定せず本人申立事案等を助成対象としております。(厚生労働省調べ)
このままの状態が続くなら、札幌市内に居住していることによって、費用助成を受けることができず、成年後見制度の利用ができなかった、という事態も起こりえます。 - 以上により、札幌市成年後見制度利用支援事業実施要綱を、市長申立ての事案に限定せず、本人申立てや親族申立て等を契機とする場合においても費用助成の対象となるように、改正することを強く要望いたします。
以上