声明・意見書

日本司法支援センターに合理的配慮を求める意見書

日本司法支援センター
 理事長 板東 久美子 殿

 

第1 意見の趣旨
 日本司法支援センターは、代理援助契約書及び重要事項説明書の記載の簡易化の検討を進めるにあたり、当会において作成した重要事項説明書の記載を簡易化した文書(別紙「法テラスの代理援助の説明」)も参考にした上で、早急に記載の簡易化を実現すべきである。

 

第2 意見の理由

  1.  当会は、令和元年11月1日付で「日本司法支援センターの代理援助契約書等に関する意見書」を発布し、その中で日本司法支援センター(以下、「法テラス」)に対し、障害者に対する「合理的配慮」の必要性を指摘した上で、法テラスの代理援助契約書及び重要事項説明書(以下、まとめて「代理援助契約書等」)の書式につき、るびを付すことで障害を持つ利用者にとって理解が容易になる配慮を求めた。
     これに対し、法テラスは、当会に対し、令和元年12月20日付の連絡文書において、るび付きの代理援助契約書等の書式として、従来から法テラスにおいて利用してきた代理援助契約書等にるびを付した書式(以下、「本件新書式」)を作成し、事後は同資料を代理援助契約書等の補完資料と利用していく旨通知した。
  2.  しかしながら、本件新書式は、従来の代理援助契約書等の書式の文面を簡易化するなどの配慮をすることなく、従来の書式に単にるびを付することで作成した書式であり、これにより代理援助契約書等の読み上げは可能になったとしても、代理援助契約書等に使用されている法律用語が難解であり、障害者にとって代理援助契約書等の理解が困難であることに変わりはない。
     法テラスの上記連絡文書には、「契約書等の条項をより一層分かりやすく記載することも含め、引き続き検討」していく旨記載されており、法テラスにおいてもより一層の「合理的配慮」が必要との認識であることは伺い知れるが、本件新書式の作成から2年が経過しようとしている現在においても、法テラスにおいて代理援助契約書等の記載の簡易化作業が具体的に進行しているとの情報に接することがない。
  3.  そのため、今般、当会では、法テラスにおける代理援助契約書等の記載の簡易化の検討が促進されるよう、重要事項説明書において特に重要となる点を抽出した上で、抽出した条項の内容を簡易化した書面(別紙「法テラスの代理援助の説明」、以下、「本件簡易化書面」という)を作成した。
     本件簡易化書面の作成においては、知的障害者の家族によって構成されている「一般社団法人札幌市手をつなぐ育成会」(以下、「札幌市手をつなぐ育成会」)の監修を依頼し、同会の意見も反映させて作成しており、知的障害者の事理弁識能力の幅を踏まえて、より多くの知的障害者にも理解が可能となるよう作成されたものであり、代理援助契約書等の記載の簡易化を進める上では参照価値の高い資料と考える。
  4.  現在は、障害者にとって代理援助契約の内容の理解が困難な状況が解消されておらず、「合理的配慮」を欠く状況にある。法テラスが当該状況を放置するのは障害者差別解消法に違反し、違法というべきである。
     したがって、当会は、法テラスに対し、再度、「本件簡易化書面」も参考の上で、代理援助契約書等の記載の簡易化の検討を進め、早急に記載の簡易化を実現するよう求める。また、札幌市手をつなぐ育成会からは、本件簡易化書面の他にも、援助申請から援助決定、援助終結そして償還完了までのフローチャートやイラストを交えた説明書があった方がわかり易いとの意見もあったことを付言しておく。
     代理援助契約書等の記載の簡易化は、成年後見相当の高齢者及び障害者が代理援助契約を締結し、本人として後見開始審判の申立てを行う可能性を開き得る課題であり、この点から法テラスとして慎重な検討を要しているとも考え得るが、法テラスに対しては、そもそも成年後見相当であることを以て、法テラスを利用できず、本人として後見開始審判の申立てをなし得ないという現状の制度及び運用自体が障害者に対する「合理的配慮」を欠いた状態にあるという点を十分に認識した上で、代理援助契約書等の記載の簡易化の検討を進めるよう求めるものである。

以上

令和4年1月27日
札幌弁護士会
会長 坂口 唯彦

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