死刑執行に抗議する会長声明
2022年(令和4年)7月26日、東京拘置所において1名の死刑が執行されました。2021年(令和3年)12月21日に3名の死刑が執行されて以来の執行であり、古川禎久法務大臣が就任後、2度目の執行となり、岸田内閣発足後、これで合計4名に対して死刑が執行されたことになります。
死刑は生命を奪う刑罰であり、誤判の場合、事後的な回復が不可能です。そして誤判・えん罪の危険が現実のものであって、誤った死刑が執行されるおそれが否定できないことは、これまでの複数の再審開始決定が明らかにしています。今回死刑が執行された死刑囚は再審請求中であり、再審請求中に死刑が執行されたことからしても非難を免れません。
国際連合の自由権規約委員会は、日本の第6回定期報告に対する最終見解(2014年7月23日採択)において、死刑判決に対する必要的な上訴制度がないこと、再審請求に死刑の執行停止効がないことなど、日本の死刑制度には国際人権基準の観点から問題があると指摘し日本政府に対しその改善を求めると共に、死刑の廃止を目指し、規約の第二選択議定書(死刑廃止選択議定書)への加入を考慮することを求めています。
そもそも国際社会においては、死刑廃止に向かう潮流が主流となっています。2018年(平成30年)12月17日には、国連総会において、死刑の廃止を視野に入れた死刑の執行停止を求める7回目の決議が、これまでの最多の121か国の賛成により採択されています。また、2021年(令和3年)には、死刑を廃止又は停止している国(10年以上死刑が執行されていない国を含む。)は144か国に及び、世界の3分の2以上の国において死刑の執行がなされていません。加えて、昨年7月には米国の司法長官が、連邦レベルでの死刑の執行を停止する指示を出すなど、世界的な死刑廃止の潮流はさらに進んでいます。
このような死刑制度が抱える重大な問題性や国際的な死刑廃止への潮流に鑑み、日本弁護士連合会は、2016年(平成28年)10月7日、第59回人権擁護大会において、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し、2020年までに、死刑制度の廃止を目指すべきであることを宣言しました。
また、札幌弁護士会は、2019年(平成31年)2月26日「死刑執行の停止及び死刑制度の廃止を求める決議」を臨時総会において採択し、国に対し、死刑確定者に対する死刑の執行を直ちに停止し、速やかに死刑制度を廃止することを求めています。そして、従前から死刑が執行される都度、政府に対し強く抗議してきたところです。
今回の死刑執行は、このような死刑制度を巡る国内外の情勢の変化並びに人権擁護大会における上記の宣言及び当会の上記総会決議を無視するものであって、極めて遺憾です。
当会は、政府に対し、直ちに死刑の執行を停止し、速やかに死刑制度を廃止することを求め、今回の死刑執行に対し強く抗議します。
2022(令和4年)7月27日
札幌弁護士会
会長 佐藤 昭彦