前内閣総理大臣秘書官による差別発言に抗議し、同性間の婚姻の早期立法を求める会長談話
2023(令和5)年2月3日、荒井勝喜前内閣総理大臣秘書官が、同性カップルについて、「僕だって見るのも嫌だ。隣に住んでいるのもちょっと嫌だ。」、また同性間の婚姻について、「社会に与える影響が大きい。マイナスだ。秘書官室もみんな反対する。」などと発言したほか、「同性婚を認めたら国を捨てる人が出てくる。」との趣旨の発言を行ったと報道された。
荒井前秘書官のこれらの発言は、同性カップルに対する露骨な嫌悪感の表明であって、同性愛者等の性的マイノリティの尊厳を否定し、社会から排除するものである。また政府関係者によりかかる発言がなされたことは、日本社会全体に誤ったメッセージを与え、根強く残る性的マイノリティに対する差別意識を助長するものになりかねない。
2021(令和3)年3月17日、札幌地方裁判所は、民法及び戸籍法の婚姻に関する諸規定が、同性愛者に対しては、婚姻によって生じる法的効果の一部ですらもこれを享受する法的手段を提供しないとしていることは、合理的根拠を欠く差別取扱いに当たり、憲法14条1項に違反すると判断した。これを受けて当会も、同年4月1日、国に対し、この判決を真摯に受け止め、重大な人権侵害を生んでいる現在の違憲状態を速やかに解消するべく、同性間の婚姻を認める立法に直ちに着手することを強く求める会長声明を発出した。
今回の荒井前秘書官による差別発言は、裁判所が非難した人権侵害を是正するどころか、むしろこれを正当化するものであって、看過し得ないものである。
2023(令和5)年5月には、広島で、主要国首脳会議(G7サミット)の開催が予定されている。G7諸国の中で、同性カップルに対する法的保障がなされていないのは日本のみである。このような中で上記差別発言が行われたことにより、議長国日本の国際的な人権意識の欠如が問われることになりかねない。
当会は、荒井前秘書官の差別発言に強く抗議するとともに、国に対し、性的マイノリティに対する差別を解消し、その尊厳を回復するために、同性間の婚姻の早期の立法化をあらためて求めるものである。
2023(令和5)年2月13日
札幌弁護士会
会長 佐藤 昭彦