イスラエル及びハマス等パレスチナ武装勢力の双方に対して直ちに恒久的な停戦を求め、日本政府に対して日本国憲法前文の精神を踏まえ停戦の実現に向けて全力を尽くすことを求める会長声明
- ハマス等パレスチナ武装勢力(以下「ハマス等」という。)が本年10月7日に行った攻撃を発端として激化したイスラエル及びハマス等の間の紛争は既に2か月以上が経過し、11月下旬に7日間の停戦がなされたものの、12月1日には戦闘が再開され、現在に至るまで激しい戦闘が続いている。
12月5日時点において、ガザ地区での死者数が少なくとも1万5,900人以上(ガザ地区保健省発表)、イスラエル側の死者数が1,200人以上(国連人道問題調整事務所(UNOCHA)発表)とされている。
ガザ保健省のデータによると、死者数のうち、70%が子どもや女性とされ、少なくとも250人が医療従事者とされている。12月1日の戦闘の再開以降はイスラエルによるガザ南部への地上侵攻も開始され、さらに犠牲者が増加することが深刻に懸念される。
他方でハマス等側に捕らえられたとされる約30人の子どもを含む約240人のイスラエル人の人質についても、その一部が複数回に分けて解放されているものの、いまだ全員の解放には至っていない。 - 紛争当事者に遵守が求められる国際人道法及び国際人権法においては、特に子ども及び医療従事者を保護するための特別の規定が用意されている。にもかかわらずこのように大勢の子ども及び医療従事者を含む人命等の犠牲が生じていることは到底正当化できるものではない。
また水や電気の供給を遮断し民間人に住居から退去するように圧力をかけることも国際人道法に違反している。
イスラエル及びハマス等の双方が行っていることは、いずれも国際人道法及び国際人権法に違反するものである。
当会は、イスラエル及びハマス等双方に対し直ちに停戦するように強く求める。イスラエルは直ちに恒久的な停戦に向けた行動をとるべきであり、ハマス等は人質全員を即時に解放するべきである。 - 日本国憲法は徹底した恒久平和主義に立脚し、その前文において「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」「いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」と謳っている。
12月9日、国連の安全保障理事会は、ガザ地区の紛争について人道目的の即時停戦を求める決議案の採決を行ったが、日本を含む13か国が賛成したにもかかわらず、アメリカの拒否権行使により、誠に遺憾なことに決議案は否決された。
しかしながら先に述べた日本国憲法の精神を踏まえ、日本政府は、ガザ地区における平和の実現のためにさらなる外交努力を尽くすことが求められているというべきである。
よって当会は、日本政府に対し、今後も国際社会と連携しつつ、イスラエル及びハマス等の双方に対して恒久的な停戦と人質の解放並びに国際人道法及び国際人権法の遵守を求める働き掛けに全力を尽くすことを強く求める。
以上
2023年(令和5年)12月13日
札幌弁護士会会長 清水智