声明・意見書

再審法の改正を受けての会長声明

  1.  2026(令和8)年7月17日、「刑事訴訟法の一部を改正する法律」(以下「改正法」という。)が成立し、刑事再審手続に関する規定が改正された。
     1948(昭和23)年に刑事訴訟法が制定されて以来、再審手続に関する規定が改正されたのは初めてのことである。これまで僅か19条しか条文がなく、「再審のルール」がほぼ存在しない状態で、えん罪被害からの救済が試みられていたことからすれば、今回の改正は一定の意義を有するものの、未だ不十分な点がある。

  2.  すなわち、改正法の内容は、法制審議会刑事法(再審関係)部会(以下「法制審」という。)が、2026(令和8)年2月12日に法務大臣に答申した「刑事再審手続に関する要綱(骨子)」がほぼそのままベースとなっており、えん罪被害者の救済の観点からは極めて不十分である。
     当会は、同年1月16日付で会長声明を発したとおり、法制審のあり方に抗議し、法務省・法制審主導の改正の方向性に強い懸念を表明してきたところであり、改正法が、えん罪被害者の救済の観点において、「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」が提出した法案(議員立法)から相当に後退し、今まで以上にえん罪被害者の救済を困難にするおそれのある内容となってしまったことについては失望を禁じ得ない。

  3.  改正法の問題点としては、①検察官に対する証拠提出命令が、弁護人及び再審請求人ではなく裁判所への証拠提出を命じるものであるうえ、提出の対象が相当に限定されており、無罪につながる証拠が弁護人及び再審請求人に開示されないおそれがあること、②証拠一覧表の作成・提出を検察官に命じる制度が定められず、検察官手持ち証拠が明らかにならないこと、③長期化の原因となってきた再審開始決定に対する検察官の不服申立てが、「原則禁止」に留まり、例外的な不服申立てが許容されたこと、④検察官から裁判所に提出された証拠の複製を再審請求やその準備以外の目的で使用することを一律に禁止し、その違反に対して刑事罰を課していることの4点が挙げられる。
     特に証拠開示については、袴田事件、福井女子中学生殺人事件など、近年雪冤を果たした多くのえん罪事件において、検察官から弁護人に開示された証拠が無罪の決め手となっているという現実を踏まえると、改正法は大きく改善される必要がある。

  4.  以上のとおり、改正法には未だ不十分な点が多く存在しているが、まずは改正法をえん罪被害者の適正かつ迅速な救済という再審法の本来の目的に沿って適切に運用していくことが必要であり、裁判所や検察官の対応を注視していかなければならない。
     改正法の附則では、政府は5年ごとに改正法の施行状況等を勘案し、証拠の開示の在り方等について検討を加え、必要があると認めるときは所要の措置を講ずることが定められている。長年にわたり手つかずであった刑事訴訟法の再審手続に関する規定の改正は大きな一歩であるものの、前述したような不十分な点に対応するための5年後の見直しに向けたはじめの一歩でもある。
     当会は、えん罪被害者の迅速な救済のために、改正法の施行状況を検証し、あるべき再審手続を実現すべく、引き続き尽力していく所存である。

  5.   2026(令和8)年8月20日
    札幌弁護士会
    会長 佐々木 潤

その他のページ