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現在、衆議院法務委員会において、司法修習生の修習費用につき、貸与制を前提として資力要件により貸与金償還の繰延べを可能とする政府与党提出の裁判所法改正案と、暫定的に2年間給費制を存続させ、その間に法曹養成制度全体の見直しを行うことを内容とする公明党提出の裁判所法改正案がそれぞれ審議されている。
これまで札幌弁護士会では、北海道弁護士会連合会・日本弁護士連合会及び各地弁護士会と連携し、司法修習生に対する給費制の廃止・貸与制の導入を内容とする改正裁判所法の施行を阻止し給費制を維持すべく、街頭行動を含む署名、広報、マスコミへの働きかけ、議員要請、市民集会の開催など、精力的に活動を行ってきた。また、この問題に関しては、与野党を問わず札幌地方裁判所管轄内の圧倒的多数の国会議員から給費制維持に関する賛同、理解を得られている。
給費制は、司法制度を担う人材を国費で養成することは国の責務であるという考えから、1947(昭和22)年以来、維持されてきた制度である。そして、給費制は、司法修習生に対して個人的な経済的便益を与えることを意図した制度ではない。給費制の問題は、単に司法修習生に対する経済的支援の問題にとどまらず、法曹養成制度全体の在り方、ひいては法曹人口問題を含めた我が国の司法制度の在り方と密接に関連する重要な問題である。具体的には、司法制度の最終的な受益者はその利用者である国民であり、国にはかかる制度を担う人的インフラである弁護士や裁判官、検察官になろうとする司法修習生を養成する責務があるとの考え方を前提にしている。給費制は司法修習生に修習専念義務を課すことに伴い憲法上の様々な権利を制約することの合理的な代償措置なのであり、そうであるからこそ、これまで多くの国民から支持を得てきたのである。
給費制は、国民の人権を守り、法の支配を貫徹するために不可欠な制度である。法科大学院生が多くの負債を抱え、また法科大学院生の志願者数が減少している中で、これ以上の経済的負担を司法修習生が課されるということになれば、社会のあらゆる階層・分野から有為・多様な人材を法曹として供給することができず、司法制度の根幹を揺るがす事態となりかねない。
よって、当会は、国会・政府に対し、給費制の存続を内容とする裁判所法の改正を求めるとともに、引き続き給費制存続のための運動を継続することを宣言する。
2012年(平成24年)3月29日
札幌弁護士会
会長 山﨑 博
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