導入すべき行政規制
(1) 提携リース取引を業として行う事業者の登録制
提携リース取引に対する法規制を実効化するため,これを業として行う者は経済産業省又は消費者庁への登録を要するものとし,同時に,報告義務徴収,立入検査,改善命令等の行政監督権限に服することとすべきである。
(2) リース契約締結時の書面交付義務・重要事項説明義務
提携リース取引におけるトラブルにおいては,前記のとおり契約締結にあたり,サプライヤーが契約内容を十分に説明しなかったり,虚偽の説明をすることがその大きな要因となっている。
そこで,リース会社は,契約締結時に書面交付義務を負い,当該書面には,①リース対象物件の名称及びその価格(当該物件に附帯する損害保険費用等がある場合はその内容及び価格,当該物件の設置・設定のための費用がある場合はその内容及び価格),②リース料率,③中途解約の可否,④クーリング・オフなど民事的規制の内容等を明示し,また,それらについての説明義務を負うこととすべきである。
(3) 役務提供をリース契約の主たる目的とすることの禁止
実質的には役務提供を主たる目的としながら,廉価なリース物件に高額なリース料を設定し,形式上はリース契約の法形式をとるような契約を締結すること,すなわち,役務提供をリース契約の主たる目的とすることを禁止すべきである。
(4) ユーザーの支払能力調査義務・過剰与信の禁止
提携リース取引においては,ユーザーにとって不相当に高額なリース契約が締結されていたり,リース物件がユーザーにとって質的・量的に過剰であるリース契約が締結されているなどの卜ラブルが多く存在する。
そこで,これを未然に防止するため,リース会社はユーザーの支払能力調査義務を負い,その能力を超える契約や,ユーザーにとって質的・量的に過剰な契約が締結されないよう配慮する義務を負うこととすべきである。
(5) 前リース契約の残リース料をリース料に上乗せすることの禁止
リース取引において,リース契約期間中に,新しい物件が必要になった場合,前のリース契約の残リース料を新しいリース契約に上乗せする手法が用いられるケースが多々見られる。提携リース取引においては,この手法が悪用され,既存のリース物件に何の問題もないのに,その入れ替えを勧められ,次々とリース契約を組まされる被害も多く発生している。
このような残リース料の上乗せは,不必要なリース契約を次々契約させる際に,前リース契約の残リース料の存在を把握しにくくするために悪用されていることも多い。
また,残リース料の上乗せがなされる場合においては,前リース契約の残リース料には既に手数料や金利などが含まれているのに,この金額にさらにリース料率をかけることになることから,実質的に,利益に対してさらに利益を乗じる二重取りが行われているのにも等しいといった問題もある。
したがって,このような残リース料の上乗せは,禁止すべきである。
(6) リース物件の市揚価格に比して著しく高額なリース料設定の禁止
提携リース取引においては,悪質なサプライヤーがユーザーを得ることができたリース物件を高値でリース会社に売却し,その結果,市場価格に比して著しく高額なリース料が設定される事例が多発している。
リース会社は,サプライヤーと提携関係にあり,リース物件の市楊価格を把握し,適正な与信を行い得る立場にある。リース業界団体においても,リース料総額等の取引条件が不適切なリース取引は排除することとされている(社団法人リース事業協会・平成17年12月6日付け「電話機リースに係る問題事例の解消を目指して」,平成20年11月26日付け「小ロリース取引に係る問題事例の解消を目指して」)。
そこで,リース料がリース物件の市場価格に照らして不相当に高額に設定されているリース契約を締結することを禁止すべきである。
(7) 不招請勧誘の禁止
提携リース取引による被害事例のほとんどは,サプライヤー側からの訪問販売に端を発して契約が締結されている。このような不意打ち的な勧誘に基づき,ユーザーがリース物件の必要性や契約内容につき十分な検討,理解をする機会を与えられないまま契約が締結され,その結果,トラブルや被害に至る事例が頻発している。
そこで,提携リース取引においては,特定商取引法3条の2などを参考にして,リース契約の勧誘をしようとする者に対して相手方に「勧誘を受ける意思があること」を確認する義務を課し、勧誘を受けることを承諾した者以外の者に対する勧誘を禁止すべきである。
導入すべき民事規制(民事ルール)
(1) リース契約においてサプライヤーの行為をリース会社の行為と同視する規定
前述したとおり,提携リース取引においては,サプライヤーは,勧誘から契約締結に至るまでの過程全体を通じてリース会社の媒介者ないし補助者的な立場にあり,リース会社は,サプライヤーのこのような行為によって利益を拡大している。消費者契約法5条や民法101条の趣旨や報償責任の見地などから,サプライヤーによる違法・不当な勧誘行為等があった場合には,これをリース会社の行為と同視すべきであり,ユーザーは,リース会社の知不知に関わらず,サプライヤーの違法・不当な行為に基づく詐欺,錯誤等の事由をリース会社に対して主張し,リース契約の無効,取消し等を主張し得ることを明示的に規定すべきである。
(2) サプライヤーの契約違反や約束違反があった場合における,ユーザーのリース会社に対するリース料の支払拒絶権
提携リース取引において,ユーザーに対するリース物件の提供のために,リース会社がこれをサプライヤーから購入して代金を支払い、リース会社はユーザーからリース料の支払を受けて上記代金を回収するとともに利益を得るという仕組みは、割賦販売法における個別クレジット(個別信用購入あっせん)と同様の経済的効果を生じるものである。
そして,提携リース取引においては,サプライヤーとユーザーとの間でリース物件に関連する何らかの契約(例えばホームページの作成・更新)や約束(例えばキャッシュバック)がなされるといった場合も少なくないところ,サプライヤーは勧誘から契約締結に至るまでの過程全体を通じてリース会社の媒介者ないし補助者的な立場にあり,ユーザーは,そうした契約や約束をリース契約と一体のものとして理解しているのが通常である。また,前述のように,サプライヤーの行為はリース会社のそれと同視されるべき関係にあるから,サプライヤーによるそうした契約や約束の違反があった場合に,リース会社がリース料の支払拒絶という形でその不利益を被ったとしても酷ではない。したがって、割賦販売法35条の3の19などを参考に,サプライヤーの契約違反や約束違反があった場合に,ユーザーは,サプライヤーに対して生じている事由をもってリース料の支払を請求するリース会社に対抗することができる旨の規定を導入すべきである。
(3) リース契約のクーリング・オフ制度
前述したとおり,提携リース取引による被害事例のほとんどは,サプライヤー側からの訪問販売に端を発しており,不意打ち的,攻撃的な勧誘によって,ユーザーが必要性のない,不当に高額な契約を締結させられる事例が頻発している。それゆえ,提携リース取引においては,ユーザーが消費者であるか事業者であるかに関わらず,一定の期間をユーザーの熟慮期間とし,リース契約のクーリング・オフを認めるべきである。
(4) 不実の告知や不利益事実の不告知など不適正な勧誘によるリース契約の取消権
提携リース取引による被害事例の多くにおいて,実質的には消費者と同視し得るような小規模ないし零細事業者が多く被害者となっていることに鑑み,提携リース契約について,ユーザーが消費者であるか事業者であるかに関わらず,一般民事法よりもユーザーの立証負担が軽減された形で,不実の告知や不利益事実の不告知など不適正な勧誘によることを理由とした取消しをなし得る制度を導入すべきである。