北海道における最低賃金を大幅に引き上げ、生活保護との逆転現象の本年の解消を求める会長声明
- 2013年8月6日、厚生労働書の中央最低賃金審議会(目安に関する)小委員会は、今年度の最低賃金の引き上げ額について、全国平均で14円とすることを決めた。これを基に計算すると、全国平均の最低賃金額は時給763円となる。そして、生活保護費と最低賃金との乖離幅が22円と大きかった北海道については、「11円~22円」の引き上げ目安を示して2年以内に速やかに解消することとされた。
これを受けて、本年8月21日、北海道地方最低賃金審議会は、北海道の最低賃金を15円引上げて719円から734円に改正することが適当であると答申している。 -
2008年7月に施行された改正最低賃金法は、地域別最低賃金を定める際には労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮することを求めており(最低賃金法9条3項)、この法改正を受けて最低賃金は毎年引き上げられ、2008年に時給703円であった最低賃金の全国平均は、2012年には時給749円にまで引き上げられた。
これにより、2012年に11都道府県で発生していた、最低賃金が生活保護水準を下回るといういわゆる逆転現象は、全国的には解消されつつある。しかしながら北海道では、今回の最低賃金の引き上げによっても、なお逆転現象が解消されない見通しである。 - 加えて、答申での最低賃金時給734円で1か月(174時間)働いたとしても、賃金の月額は12万7716円、年額でも153万円程度になるにすぎない。ワーキングプアの一つのラインは年収200万円であるとされているところ、この金額はそれを大きく下回るものである。事実、この金額では、単身で生活することも容易ではなく、まして家族を養うことは不可能である。
- 1日8時間働いて、家族を養うことが出来るような収入を得ることは、日本社会が持続的に維持、発展していくために必要不可欠であるとともに、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障した憲法第25条の精神からも当然のことである。
特に2013年においては、アベノミクスのもと大胆な金融緩和とインフレ政策が取られているところ、経済を活性化させ、デフレから脱却するためには、家計にお金が回ることが重要であり、そのような観点からも最低賃金の引き上げは必要不可欠なことである。 - 当会は、北海道労働局に対し、北海道における最低賃金を少なくとも22円引き上げて時給741円とし、生活保護との逆転現象を本年度中に解消することを求める。
2013年9月2日
札幌弁護士会 会長 中村 隆