声明・意見書

婚外子の法定相続分についての最高裁判所違憲決定を受けて
家族法における差別的規定の改正を求める会長声明

 本年9月4日、最高裁大法廷は、婚外子の相続分を婚内子の2分の1とする民法第900条4号ただし書前段(以下「本件規定」という。)について、「父母が婚姻関係になかったという、子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべきであるという考えが確立されてきている」との理由から、「立法府の裁量権を考慮しても、嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を区別する合理的な根拠は失われていた」と判示し、本件規定は「遅くとも平成13年7月」(他の1件の決定では同年11月)「当時において、憲法14条1項に違反していた」とする2件の決定を行った。

 最高裁は、これまで大法廷1995年7月5日決定やその後の小法廷での判決や決定において、本件規定を憲法第14条1項に反するとまではいえないとしていた。これに対し、当会は、2010年3月10日、両性の平等と男女共同参画社会実現の観点から、「民法(家族法)改正の早期実現を求める会長声明」を発し、同声明において、選択的夫婦別姓の導入に加え、婚外子の相続分差別規定等についても、本人の意思や努力によって変えることのできないものを身分として定めるものであって憲法第第14条、憲法第24条に違反するとし、早急な改正を求めてきた。

 今回の最高裁決定は、本件規定について、個人の尊厳と法の下の平等を定める憲法に照らし、検討吟味したうえで、明確に違憲とする画期的な判断を示したものであり、当会はこれを高く評価する。

 すでに法制審は、「民法の一部を改正する法律案要綱」を1996年総会で決定し、男女とも婚姻適齢を満18歳とすること、女性の再婚禁止期間の短縮、選択的夫婦別姓の導入、及び婚外子と婚内子の相続分を同等とすることを答申していた。また、2010年にも上記要綱と同旨の法律案が政府により準備されていた。にもかかわらず、国会は、いまだに本件規定を含む差別的な規定について法改正を行わず、これらの規定を放置しており、このために国連の自由権規約委員会、女性差別撤廃委員会、児童の権利委員会及び社会権規約委員会から、繰り返し上記のような差別的規定の改正について勧告等を受けているところである。

 当会は、国会に対し、本件規定の改正を直ちに行うことと併せて、婚姻適齢に男女の差を設ける民法第731条、女性について不合理な再婚禁止期間を定める民法第733条、夫婦同氏を強制する民法第750条等、家族法における差別的規定についても、速やかに改正することを強く求める。

2013年9月27日
札幌弁護士会 会長  中村 隆

その他のページ