死刑執行に関する会長声明
本年9月12日、東京拘置所において、1名に対する死刑が執行された。この死刑執行により、谷垣禎一法務大臣は、昨年12月に就任してから僅か1年内に6名の死刑執行を命じたことになる。
日本弁護士連合会は、本年2月12日、谷垣法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要望書」を提出して、死刑制度に関する当面の検討課題について国民的議論を行うための有識者会議を設置し、死刑制度とその運用に関する情報を広く公開し、死刑制度に関する世界の情勢について調査の上、調査結果と議論に基づき、今後の死刑制度の在り方について結論を出すこと、そのような議論が尽くされるまでの間、すべての死刑の執行を停止すること等を求めてきた。
しかし、谷垣法務大臣は、こうした要請に対し何らの配慮もせず、死刑執行に対する抗議や死刑執行停止を求める多くの意見を無視して、再び死刑執行を命じたものであり、到底容認することはできない。
特に本件は、第一審で無期懲役判決であったものが、控訴審で死刑判決となったものであり、裁判官の間でも、死刑相当か否かの判断が分かれた極限的事案である。一方、裁判員裁判では一般市民が死刑という極めて困難な判断を求められているにもかかわらず、死刑制度とその運用に関する情報の公開は進まず、死刑制度全般についての全社会的議論もいまだなされていない。
そのような状況のもと、谷垣法務大臣は、就任後三度目の死刑執行を強行したものであるが、本件によって現政権の死刑執行を推し進める姿勢が鮮明となり、極めて憂慮すべき事態に至っている。
当会は、今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに、あらためて死刑の執行を停止し、死刑制度全般に関する情報を広く国民に公開し、死刑制度の廃止について全社会的な議論を直ちに開始することを求めるものである。
2013年9月20日
札幌弁護士会 会長 中村 隆