声明・意見書

定秘密の保護に関する法律案の衆議院での採決の強行に抗議し、
参議院での廃案を求める会長声明

  1.  去る11月26日、特定秘密の保護に関する法律案(以下、「本法案」という)が、政府与党と一部野党の賛成の下、採決が強行されて衆議院を通過し、翌27日より参議院での審議が始まった。
  2.  当会では、2012年3月23日「秘密保全法制定に反対する会長声明」を、2013年11月21日に「特定秘密の保護に関する法律案の制定に反対する会長声明」をそれぞれ公表し、本法案が憲法上の諸原理をないがしろにし、憲法によって保障された国民の基本的人権を侵害するものであることを指摘した上、本法案に強く反対してきた。
  3.  本法案は、国会への提出後、政府与党と一部の野党との協議により、第三者機関の設置を「検討する」旨の附則が追加され、また秘密指定の有効期間を原則最長60年とするなどの修正が加えられている。しかしこれら修正は単なる努力規定にとどまったり、多くの例外が認められているなど、本法案の根本的な問題点を何ら解消するものではない。
     加えて衆議院の審議では、政府は曖昧な答弁を繰り返し、答弁の不一致や変遷があるなど、法案・制度の内容自体検討不十分なものであることが明らかとなっている。
  4.  本法案に関しては、これまで全国の弁護士会を含めた各種団体、国民各層に加え外国の機関、メディア等からも同法案を危惧する意見表明がなされ、11月25日に福島県で開かれた公聴会では出席者全員が法案の内容に反対ないし懸念を示した。さらに、「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則(ツワネ原則)」との整合性について検討がなされていないとの指摘もあるのであって、少なくとも法案の審議には十分な時間が費やされることが必要である。それにも関わらず、国民の基本的人権を侵害する本法案について、審議さえ不十分なまま民意を軽視した形で採決が強行されたことは、二重の意味で憲法上の諸原則に反するものである。
     なお、政権与党である自由民主党の石破茂幹事長は、本年11月29日、自身のブログにおいて、本法案に対するデモ活動が行われていることについて「本質的にテロ活動に同じ」と発言した。この発言は、本法案を推進する与党幹部が、基本的人権の中でももっとも重要であるとされる表現の自由の意義について全く無理解であることを示しているというべきであって、本法案が国民の知る権利や報道の自由など表現の自由から導かれる基本的人権を侵害するということについての無理解をも端的に示しているというべきである。
  5.  当会は、本法案の衆議院における採決の強行に強く抗議するとともに、本法案を参議院において廃案とするよう強く求めるものである。

2013年(平成25年)12月2日
札幌弁護士会会長 中村 隆

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