声明・意見書

貸金業法の規制緩和に反対する会長声明

 平成26年4月19日付日本経済新聞記事によると、自民党は、貸金業者に対する金利規制・総量規制を緩和する法改正を検討し、今国会での成立を目指すとのことであり、その内容としては、金利の規制を現行の年率20%から29.2%に引き上げるとともに、貸付を収入の3分の1までに制限する「総量規制」についても、貸金業者の自主規制に委ねるよう変更するとされている。

  しかし、現行貸金業法は、自己破産や自殺の急増など深刻な社会問題であった多重債務問題を解決すべく、平成18年12月、自民党政権下において与野党一致で成立したものである。従前、貸金業者が要求してきた年29.2%もの高金利では、分割返済金の大部分が利息に充当されて元本の返済は進まず、むしろ債務残高が『雪だるま式』に膨れ上がり、高金利を返済するためにさらなる借入先が必要となる『自転車弁済』を促すこととなり、一般市民が容易に多重債務に陥る原因となっていた。また、客観的に返済可能な金額を大きく上回る過剰融資が繰り返された結果、返済不能となって自己破産に追い込まれる者も後を絶たなかった。

 このような状況の下、高金利の引き下げ及び総量規制を柱とした現行貸金業法の完全施行と、官民を挙げた多様な取り組みによって、多重債務対策問題が大きな成果を上げてきたことは周知であるところ、法改正によって金利規制・総量規制を緩和し、かつての高金利貸付・過剰融資を是認することは、再び深刻な多重債務問題を招来するものであって到底許されない。

 一般市民・一般消費者・一般労働者らの生活や中小零細企業・小規模事業主らの経営はなお厳しい状態が続いているが、安易に高金利・過剰融資を受け入れれば、やがて返済できず多重債務に陥ることは自明であって、結局は、生活や事業そのものが破綻することとなる。

 今、政府が為すべきことは、高金利による過剰融資ではなく、生活や事業を破綻させない低金利の融資制度を拡充させることである。預貯金の金利が限りなく0%に近い現在、現行の出資法・利息制限法の上限利率(年率20%)でさえなお高金利といえるのであり、むしろ、さらなる金利の引き下げこそが必要である。

 当会は、現行貸金業法の成立・完全施行の実現に取り組むとともに、平成16年10月から継続して多重債務の無料相談を実施し、関係諸団体とも協力・連携しながら多重債務問題の解決に向けて努力してきたものであり、高金利を復活させ、過剰融資を是認する規制緩和(貸金業法「改悪」)には断固反対する。

以上

平成26(2014)年5月29日
札幌弁護士会
会長  田村 智幸

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