司法試験合格者を直ちに減員することを求める会長声明
本年9月8日、2015(平成27)年度司法試験の最終合格者数が1,850人であると発表された。当会は、これまでも司法試験合格者数の減員を求めてきたところ、本年度の司法試験の最終合格者数は、昨年度に比べ40人増加したこととなるが、現状の弁護士の供給過多による弊害をさらに増大させ、法曹制度そのものを崩壊させかねないものであり、極めて遺憾である。
司法試験合格者のうち、裁判官及び検察官の採用人数が抑制されている中で、大多数が弁護士になる結果、弁護士人口は、2007(平成19)年では23,119人であったものが、本年9月1日現在では36,395人になっており、その増加のペースは、あまりにも急激である。他方で裁判所の民事事件新受件数は2009(平成21)年をピークに現在に至るまで減少の一途であり、これが増加する見込みはない。すなわち、法的需要に対して弁護士供給が不均衡に急増しているといえる。総務省も「法曹人口の拡大及び法曹養成制度の改革に関する政策評価書」(2012(平成24)年4月20日付)において、現状では2,000人規模の増員ペース(年間合格者数)を吸収する需要は顕在化しておらず、現在の需要規模と増員ペースの下、弁護士の供給過多となっていると指摘していた。
このような状況のもと、政府の法曹養成制度改革推進会議は、本年6月30日、法曹人口の在り方について検討結果を取りまとめ、「法曹養成制度の実情及び法曹を志望する者の減少その他の事情による影響をも併せ考えると、法曹の輩出規模が現行の法曹養成制度を実施する以前の司法試験合格者数である1,500人程度にまで縮小する事態も想定せざるを得ない」としつつ、「司法試験合格者数でいえば、(中略)1,500人程度は輩出されるよう、必要な取組を進め」るべきであるとした。しかし、今回の司法試験合格者数はこの取りまとめの想定する合格者数どころか、昨年の合格者数すら上回るものであって、現状の弊害をさらに増大させる過大なものである。
そもそも当会は、2011(平成23)年11月29日開催の臨時総会において、弁護士人口の急増が現状の法的需要を上回るものであり、また、司法修習生の就職難や弁護士としてのOJT(on the job training)不足により、法律実務家として必要な技能や倫理を十分に会得していない弁護士が社会に大量に送り出されるおそれなど様々な弊害を生じさせている現状を指摘し、政府に対し、年間1,000人程度を目標に司法試験合格者数を段階的に減少させ、その実施状況等を検証しつつ、さらに適正な合格者数を検討することを求める決議を採択した。現状の弊害を解消し、法曹制度の崩壊を防ぐためには、上記の決議に従って、速やかに年間1,000人程度を目標に司法試験合格者数を減少させることが必要である。
当会は、政府に対し、次年度以降の司法試験合格者数につき直ちに1500人程度にまで減員し、さらに早急に年間1,000人を目標に減員するよう強く求める。
2015年(平成27年)9月8日
札幌弁護士会
会長 太田 賢二