司法修習生に対する給費の実現を求める会長声明
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司法修習生への給費の実現・修習手当の創設については、この間、日弁連・各単位弁護士会に対して、多くの国会議員から賛同メッセージが寄せられているが、先日、同賛同メッセージの総数が、衆参両院の合計議員数717名の過半数である359名を超えた。
メッセージを寄せられた国会議員は、与野党を問わず、世代を超えて広がりを見せている。
これは、司法修習生への給費の実現・修習手当の創設が正当な政策要求であることへの理解が得られつつあることの証左といえ、当会としても心から歓迎する。 - そもそも、司法修習費用の給費制は、司法制度の最終的な受益者はその利用者である国民であり、国にはかかる制度を担う人的インフラである弁護士や裁判官、検察官になろうとする司法修習生を養成する責務があるとの考え方をもとにしている。
当会は、給費制の廃止により、わが国の司法を支える法曹の基盤を脆弱化させ、ひいては市民の権利保障を後退させてしまうことに対し、従前から強い危惧を抱いてきた。
そして、まさにかかる危惧の通り、給費制から貸与制(無給制)に移行して以来、法曹を目指す者が年々減少の一途をたどっている。 平成27年度入学のための全国の法科大学院の受験者数はのべ9351人であり、平成16年度の受験者数(40,810人)の4分の1以下、貸与制(無給制)に移行した平成23年度(20,497人)と比べても半数以下にまで落ち込んだのみならず、実際の平成27年度入学者数は過去最低の2201人で、学生を募集した54校のうち50校で定員割れとなった。
また、法科大学院を修了しなくても司法試験の受験資格が得られる予備試験の受験者数も、平成23年の開始後は毎年増加していたところが、平成27年は初めて減少に転じた。
かかる法曹志望者数減少の主要な原因の1つは、法科大学院に入学してから法曹資格が得られるまでに重い経済的負担を余儀なくされるからであり、中でも、司法試験に合格した後もなお、1年間にわたって無給で、しかも大多数の者は国から借金をしながら司法修習を受けることを強いられるからに他ならない。
すなわち、司法修習生への給費の実現・修習手当の創設は、法曹志望者数減少に歯止めをかけるためにも喫緊の課題なのである。 - 今や、政府においても、かかる認識が広がりつつある。
すなわち、去る昨年6月30日、政府の法曹養成制度改革推進会議(議長:菅官房長官)が決定した「法曹養成制度改革の更なる推進について」においても、「法務省は、最高裁判所等との連携・協力の下、司法修習の実態、司法修習終了後相当期間を経た法曹の収入等の経済状況、司法制度全体に対する合理的な財政負担の在り方等を踏まえ、司法修習生に対する経済的支援の在り方を検討するものとする。」との一節が盛り込まれた。
これは、これまでの幾多の法曹養成制度改革に関する政府組織での提言、決定等が「貸与制を前提」と明言していたことに比べて大いに前進したものである。 - 当会は、司法修習生への給費の実現・修習手当の創設に対し、国会議員の過半数が賛同のメッセージを寄せていること、及び、政府においてもかような決定がなされたことを踏まえて、国会に対しては、給費の実現・修習手当の創設を内容とする裁判所法の改正を求めるとともに、政府と最高裁判所に対しては、かかる法改正を実現するため早急に所要の措置をとることを求めるものである。
2016(平成28)年1月20日
札幌弁護士会
会長 太田 賢二