司法試験合格者数のさらなる減員を求める会長声明
本年9月6日、2016(平成28)年度司法試験の最終合格者数が1,583人と発表された。前年度に比べ267人が減少したことになる。
昨年6月30日、政府の法曹養成制度改革推進会議は、法曹人口の在り方について検討結果を取りまとめ、「法曹養成制度の実情及び法曹を志望する者の減少その他の事情による影響をも併せ考えると、法曹の輩出規模が現行の法曹養成制度を実施する以前の司法試験合格者数である1,500人程度にまで縮小する事態も想定せざるを得ない」としつつ、「司法試験合格者数でいえば、(中略)1,500人程度は輩出されるよう、必要な取組を進め」るべきとした。本年度の最終合格者数はこれに近接してはいるものの、受験者数自体が前年度の8,016人と比較して6,899人と大幅に減少しており、そのため合格者数を減員せざるを得なかったというのが実際のところと思われる。
そもそも、裁判官及び検察官の採用人数が抑制されている中、1,500人程度にまで合格者数を減員したとしても、司法試験合格者の大多数は弁護士登録を請求することになるが、弁護士人口は2007(平成19)年では23,119人であったものが、本年9月1日時点では37,614人になっており(平成27年3月31日時点に比べても1,199人が増加)、依然として弁護士増加のペースが急激であることに変わりはない。
他方、裁判所の民事事件新受件数は2009(平成21)年をピークに現在に至るまで減少の一途であり、現時点でこれが増加する見込みは乏しい。すなわち、1,500人程度にまで合格者数を減員しても、弁護士人口の増加のペースはほぼ変わらないため、法的需要に対する弁護士の供給過多を是正するにはほど遠い状態である。
当会は、2011(平成23)年11月29日開催の臨時総会において、弁護士人口の急増が現状の法的需要を上回り、司法修習生の就職難や弁護士としてのOJT(on the job training)不足により、法律実務家として必要な技能や倫理を十分に会得していない弁護士が社会に大量に送り出されるおそれなど様々な弊害を生じさせている現状を指摘し、政府に対し、年間1,000人程度を目標に司法試験合格者数を段階的に減少させ、その実施状況等を検証しつつ、さらに適正な合格者数を検討することを求める決議を採択した。
現状の弊害を解消し、法曹制度の崩壊を防ぐためには、1,500人程度の減少にとどまらず、上記の決議どおり、速やかに年間1,000人程度を目標に司法試験合格者数を減少させることが必要である。
そこで、当会は、政府に対し、早急に次年度以降の司法試験合格者数につき年間1,000人を目標に減員するよう強く求めるものである。
2016年(平成28年)9月8日
札幌弁護士会
会長 愛須 一史