声明・意見書

同性間で使えるパートナーシップ認証制度の早期創設を求める会長声明

  1.  近時の新聞報道によれば,札幌市は,いわゆるパートナーシップ認証制度を2017年度(平成29年度)から導入する方針を固めたとのことであり,これが実現すれば日本国内の政令指定都市では初の試みとなるとのことである。
  2.  当会会員は,同性のカップルや,あるいは戸籍上は異性であっても性自認に基づけば同性同士となるトランスジェンダーのカップル等から,彼らが社会の既存の枠組みに当てはまらないがために,日常生活で様々な困難を抱え,生きづらさを感じている旨の相談を受けている。具体的には,彼らが同居する家を借りたり,パートナーを自身の職場に対して同居家族として届け出たり,パートナーの入院先で各種手続きをしようとしたりする際,その関係性の説明に悩み,また説明しても相手方から困惑されたり,差別を受けたりすることである。このような当事者が抱える困難については,平成28年4月5日,当会が札幌市議会議員をお招きして行った弁護士との共同勉強会においても,当事者から直接実情を伺ったところである。
     また,当会を含む北海道内4弁護士会で構成する北海道弁護士会連合会においては,平成28年7月22日の定期大会において「性的マイノリティに対する差別と偏見をなくし,暮らしやすい地域を作るための制度を求める決議」を採択し,北海道内の各自治体に対し,性的マイノリティについての理解促進と差別を許さないための施策を求めるとともに,いわゆるパートナーシップ認証制度の創設を求めてきた。
     かかる経緯を経て,札幌市がパートナーシップ認証制度の導入を検討しているとの報道に接したことは,当会としては誠に喜ばしく,性的マイノリティの人権擁護に資するものとして歓迎するところである。
  3.  当会は,これまで,性的マイノリティのための電話法律相談を実施したり,性的マイノリティ当事者の開催する勉強会等を後援したりすることで,当事者らの人権擁護のために努めているところではあるが,そのための法的根拠や行政の施策が不足し,あるいは社会の理解が進んでいないがために,具体的な事案においては十分な支援がなしえないことも多かった。しかし,今後,札幌市に新しい制度ができれば,札幌市内の市民や企業において性的マイノリティに対する理解が進み,同性カップルの法的トラブルを解決するための一助になるものと期待する。
     当会としても,今後益々,性的マイノリティ当事者らの法的トラブルの解決,ひいては,性自認及び性的指向によって差別されることなく,誰もが自分らしく生きられる社会の実現に向けて努力を重ねる所存であるが,そのためにも,パートナーシップ認証制度の早期創設を切に求める次第である。

2017年(平成29)1月26日
札幌弁護士会
会長 愛須 一史

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