声明・意見書

GPS捜査の違法性を指摘した最高裁判所判決に関する会長声明

 最高裁判所は,平成29年3月15日,いわゆるGPS捜査の違法性が争われていた事案について,GPS捜査が強制処分に当たるとして,法律上の根拠規定のないままGPS捜査を行うことの違法性を指摘した。
 刑事訴訟法は,法律上の根拠規定がない限り強制処分に当たる捜査をすることは許されないとする強制処分法定主義を定めている。これは,憲法31条が規定する適正手続の保障に基づく刑事手続上の大原則である。
 GPS捜査は,車両使用者らの承諾なく密かにGPS端末を取り付けて車両の位置情報を把握する捜査手法である。かかるGPS捜査は,法律上の根拠規定がなく,個人のプライバシーを無限定に侵害する危険性を有するものであるにもかかわらず,捜査機関は,捜査上の便宜を優先して多用してきた。
 これに対し,今回の最高裁判決は,個人のプライバシーが憲法による保障を受ける重要な権利であること,そして憲法35条が保障する無令状で捜索差押えを受けない自由の対象は,明文にある「住居,書類及び所持品」にとどまらず個人のプライバシーが含まれることを明言した上で,GPS捜査が個人のプライバシーを侵害する点において刑事訴訟法上の特別の根拠規定がなければ許されない強制処分に当たることを認めた。
 今回の最高裁判決は,いかに捜査上の便宜があるとしても,憲法上の保障を受ける個人の権利を不当に侵害することはできないとして,憲法の理念を堅守する態度を表明したものであり,高く評価できる。
 捜査機関においては,捜査権限の行使が個人の権利に対する重大な脅威となり得ることを自覚すると共に,自らが憲法の理念を絶対的に尊重すべき立場にあることを改めて認識すべきである。
 当会は,捜査機関に対し,今回の最高裁判決を真摯に受け止め,捜査権限を濫用することがないよう自戒することを強く求めるものである。

2017年(平成29年)3月28日
札幌弁護士会
会長 愛須 一史

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