「共謀罪法案」の衆議院での採決に抗議する声明
昨日(5月23日)、衆議院本会議において、組織犯罪処罰法案(共謀罪法案)の採決が強行され、同法案は衆議院を通過しました。
「共謀罪法案」は過去に3度国会に上程されましたが、人権侵害の恐れが大きいとの理由で、ことごとく廃案になってきた経緯があります。この点、政府は、今回の法案について、「共謀罪」という罪名を「テロ等準備罪」に変更しつつ、テロ対策に必要不可欠であり、主体を組織的犯罪集団に限定し、共謀だけでなく準備行為も要件とするなどしたので、これまでの法案とは異なる、などと強弁しています。
しかし、「組織的犯罪集団」の定義が曖昧であること、「準備行為」の概念も曖昧であること、対象犯罪が277もあり、中にはテロとは全く無関係な犯罪も多数含まれていること等から、テロ対策とは名ばかりであって、捜査機関による恣意的な判断の危険性や思想・信条の自由等の基本的人権侵害の危険性などは過去の法案と実質的に何ら変わらないものです。当会は、一貫して「共謀罪法案」に反対し、本年3月24日にも会長声明を発し、市民集会やパレードを行うなど、その危険性を指摘してきました。
今国会の衆議院法務委員会における審議では、法案の問題点について質疑がなされました。しかし、安倍晋三総理大臣や金田勝年法務大臣らによる政府答弁は具体的な説明となるものではなく、むしろ捜査機関等の恣意的な判断により、一般人が捜査の対象となったり不当に処罰されたりする危険性を、より鮮明にするものでしかありませんでした。
にもかかわらず、本会議に先立つ衆議院法務委員会では、徹底審議を求める意見が無視され、与党が質疑を一方的に打ち切って採決を強行しました。あのような混乱した中での採決を、私たちは、最近何度目にしたことでしょう。そして、遺憾なことに、同法案は衆議院を通過してしまいましたが、これはもはや多数の横暴というほかありません。
当会は、「共謀罪法案」が横暴極まりない採決により衆議院を通過したことに強く抗議するとともに、引き続き、たゆむことなく「共謀罪法案」の危険性を訴え、廃案を目指して活動を続けていきます。
2017年(平成29年)5月24日
札幌弁護士会
会長 大川 哲也