施行70年の日本国憲法の価値を再確認し個人が尊重される社会の実現に取り組む宣言
本日、日本国憲法は、施行から70年を迎えました。
日本国憲法は、一人ひとりの個人が、かけがえのない存在であるという「個人の尊厳」を核心的価値としています(第13条)。日本国憲法は、個人の尊厳を保つため、国民主権、基本的人権の尊重を定め、さらに、恒久平和主義(前文・第9条)を誓っています。いかに政府でも、これら憲法の諸原則を侵した政治を行うことはできません(立憲主義)。
日本国憲法は、私たちの基本的人権の礎となりました。そして、施行から70年間、日本は恒久平和主義の誓いのもと、ただの一度も戦争や武力の行使により他国民を殺傷することがありませんでした。
しかし、今、日本国憲法は、最大の危機に直面しています。
2013年(平成25年)、特定秘密の保護に関する法律(特定秘密保護法)が、強行採決により成立し、2014年(平成26年)に施行されました。特定秘密保護法は、知る権利(憲法第21条第1項)をはじめとする基本的人権を侵害するものです。さらに、主権者である国民が必要な情報を知らされないこととなり、民主主義、ひいては国民主権原理に対する脅威となるものです。
2015年(平成27年)には、同じく強行採決により平和安全法制整備法及び国際平和支援法(安保法制)が成立しました。安保法制は、第9条により戦後一貫して認められないとされてきた集団的自衛権の行使を可能とするなど、第96条の改正手続によらずに第9条を改変したに等しく、立憲主義に反するものです。
2016年(平成28年)には、この安保法制に基づき南スーダンでの国連平和維持活動に派遣されている陸上自衛隊に「駆けつけ警護」の新任務が付与され、憲法違反状況の既成事実化が進められています。
そして、2017年(平成29年)現在、憲法改正の動き、とりわけ「緊急事態条項」の創設を目指す動きが具体化しています。この「緊急事態条項」は、戦争や内乱、大災害などの場合、国会の関与なしに政府が法律と同じ効力を持つ政令を出す仕組みですが、「緊急事態」の名の下に基本的人権が侵害される危険性が極めて高いことは、歴史が証明しています。今まさに、国会に提出されているいわゆる共謀罪法案(組織犯罪処罰法改正法案)も、権限が肥大した国家、警察による、監視社会を招き、ひいては国政に自由に意見表明できなくなるなどといった問題があり、当会もその成立に強く反対しています。
一連の流れは、立憲主義をないがしろにし、日本国憲法の諸原則を侵すものであり、個人の尊厳が守られない社会を招来するものです。
当会は、かかる流れに抗して、日本国憲法の価値を護るための活動を展開してきました。直近においても、本年3月24日に共謀罪法案に反対する会長声明を発するとともに、同年4月5日に「STOP! 共謀罪 札幌市民集会」を開催しました。
当会は、日本国憲法施行70年の憲法記念日にあたり、日本国憲法の核心的価値が個人の尊厳にあることを再確認し、これからも、国民主権、基本的人権の尊重、恒久平和主義の諸原則を護り、立憲主義のもと個人が尊重される社会の実現に取り組み続けていくことを宣言します。
2017年(平成29年)5月3日
札幌弁護士会
会長 大川 哲也