2017年司法試験合格判定にあたり、法曹の質確保のため適正かつ厳正な判定が行われるよう求める会長声明
2017年の司法試験の最終合格発表が9月12日に行われます。
司法試験の合格者数については、法曹養成制度改革推進会議が、2015年6月30日に、司法試験の合格者数を年間「1500人程度は輩出されるよう、必要な取組を進め」ると決定しています。
しかし、司法試験の受験者数は年々減少しています。昨年、2016年の司法試験の受験者は6899人とその前年から減少していたところ、本年の受験者数はさらに減少して5967人でした。2016年と比較して932人減少しており、1割を超える大幅な落ち込みとなっています。
このように、受験者数が減少している中で、本年も1500人程度は輩出すべきとの方針が維持された場合、司法試験の持つ選抜機能が大きく損なわれ、法曹の質が確保できなくなることが懸念されます。
裁判官、検察官、弁護士は、法曹として司法制度を支えています。司法は国民の権利義務に直接かかわり、人権擁護や社会正義を担っています。したがって、法曹の質の維持、向上は、国民に対する最低限の責務であり、合格者数の確保が優先されるようなことがあってはなりません。
司法試験は、「裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定する」ことを目的にしています(司法試験法1条)。司法試験委員会に求められているのは、安易に一定数の合格者を輩出することではなく、司法制度を担う法曹に必要な学識、応用能力を適正かつ厳正に判定することです。また、その前提である法曹志望者数の回復は喫緊の課題であり、国が必要な施策をとることも必須です。
上記の決定は、「輩出される法曹の質の確保を考慮せずに達成されるべきものではないことに留意する必要がある」とも指摘しており、法曹の質の維持が前提となっています。当会は、2017年司法試験の合格判定につき、司法の重責を担う法曹として必要な学識と応用能力の有無について、適正かつ厳正な選考・判定が行われることを求めます。
以上
2017(平成29)年8月4日
札幌弁護士会
会長 大川 哲也