声明・意見書

司法試験合格者数を直ちに減員することを求める会長声明

 2019(令和元)年9月10日、本年度司法試験の最終合格者数が1502人と発表されました。前年度に比べ23人が減少したことになります。

 政府の法曹養成制度改革推進会議は、2015(平成27)年6月30日、法曹人口の在り方について検討結果を取りまとめ、「司法試験合格者数でいえば、(中略)1500人程度は輩出されるよう、必要な取組を進め」るべきとしており、本年度の最終合格者数もこの目標に近接した人数となっています。

 しかしながら、前年度における司法試験受験者数は5238人、最終合格者数は1525人のため、その倍率は3.43倍であったのに対し、本年度司法試験受験者数は4466人(前年度比772名減)であるため、その倍率は2.97倍となります。このように、前年度との対比で受験者数が14パーセント余り減少しながら、最終合格者数がほとんど減員されることなく、むしろ倍率が下降したという結果は、1500人程度の司法試験合格者輩出という上記目標を優先したとの懸念が生じます。司法試験受験者数は毎年減少し続ける中、1500人程度の合格者輩出が3年も続いており、上記取りまとめにおける「輩出される法曹の質の確保」という留意事項に照らしても、極めて問題であると言わざるを得ません。

 そもそも、長年にわたり裁判官及び検察官の採用人数が抑制されている現状では、司法試験合格者の大多数は、弁護士登録を申請することとなります。弁護士人口は法科大学院修了者が卒業した14年前の2006(平成18)年3月31日時点では2万2021人であったものが、本年9月1日時点では4万1069人となっており、弁護士増加のペースが急激であることに変わりはありません。

 これに対して、裁判所の民事事件新受件数は、2009(平成21)年をピークに現在に至るまで減少傾向は続いており、現時点でこれが増加する見込みは乏しい状況にあります。上記のとおり弁護士人口増加のペースはほぼ変わらず急激であるため、法的需要に対する弁護士の供給過多は依然として是正されていません。

 当会は、2011(平成23)年11月29日開催の臨時総会において、政府に対し、年間1000人程度を目標に司法試験合格者数を段階的に減少させ、その実施状況等を検証しつつ、さらに適正な合格者数を検討することを求める決議を採択しています。現在でも、かかる現状認識に大きな変更はありません。

 そこで当会は、引き続き政府に対し、司法試験合格者数を直ちに減員するよう強く求めます。

2019年(令和元年)9月11日
札幌弁護士会
会長 樋川 恒一

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