「コロナによる差別を許さない」会長声明
当会を代表して、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に感染され亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたします。そして、現在、治療を受けられている方々の一日も早い回復をお祈りいたします。また、かつてない状況下において奮闘されている、医療従事者、介護従事者をはじめとする全てのエッセンシャルワーカーの皆さんに心から敬意を表します。
これまでの新型コロナウィルス感染症の拡大の際に、北海道内において感染者やその家族、勤務先、医療従事者等やその家族への差別による被害が確認されています。今なお感染者数は減少しておらず、今後の感染拡大も警戒されています。今後も感染拡大が続けば、これまでに北海道内で確認された差別による様々な被害が、より一層、深刻化することが懸念されます。
感染者等に対する差別は、人間が人間として有する最も基本的な人権、「人間の尊厳」を踏みにじるものであり、憲法が保障する基本的人権の明白な侵害として断じて許されるものではありません。また、新型コロナウィルス感染症の拡大によって多くの市民に社会的・経済的な影響が及んでいますが、感染者等に対する差別は自身の苦しさをより弱い社会的弱者へと転嫁しているようにも思われます。
感染者等に対する差別がやむを得ないことなどと正当化されることはありません。新型コロナウィルス感染症の感染防止策を講じることは、自身や周囲の人の生命や生活を守るために必要なことですが、新型コロナウィルス感染症への感染や感染防止を名目にして感染者等への差別が許されることにはなりません。我が国には、ハンセン病やHIVなど、誤った知識に基づき、患者の人権を無視して、多くの市民の人生に多大な被害を与えた差別の歴史があります。今までに明らかになった科学的な知見に基づいて、支援を必要とする市民の人権に配慮して、冷静に、採るべき行動を考える必要があります。
コロナによる差別をなくすべく、共に努めていきましょう。前記のとおりこれからどのような事態が待っているのか予断を許しませんが、当会では、法律相談等を通じて、差別に対する取り組みを強化していきます。
当会は、差別を決して許さず、差別を受けた人とともに歩み、差別のない社会を実現すべく、ここにその決意を表明します。
2020年(令和2年)11月2日
札幌弁護士会
会長 砂子 章彦