声明・意見書

「谷間世代」の不平等・不公平を是正するための措置・施策等を求める会長声明

 当会は、本日の定期総会において、無給ないし貸与制のもとでの司法修習を強いられた新第65期から第70期までの司法修習修了者、いわゆる「谷間世代」の会員への経済的支援として、月額7000円を5年間、支給することを決定いたしました(なお、今後、さらに5年間の給付期間延長も検討される予定となっています)。

 司法修習生に対する給費制は、平成23年11月に廃止され、それ以降に司法修習を受けた新第65期以降の司法修習生は、無給での司法修習を強いられ、司法修習中の生活費等を必要とする者は貸与制の下での貸与を受けるほかありませんでした。

 平成29年4月19日に、裁判所法が改正され、第71期以降の司法修習生に対する修習給付金制度が創設されたものの、修習給付金制度が創設されるまでに司法修習を受けた谷間世代に対しては、何らの経済的手当もなされず、谷間世代は極めて不平等・不公平な状態で取り残されてきています。

 谷間世代の法曹の人数は約1万1千人であり、全法曹の4分の1を占めています。彼らは、修習専念義務を課されての司法修習という、他の4分の3の法曹と全く同じ司法修習をしていながらも、前述のとおり、無給での司法修習を強いられました。そして、司法修習中に貸与制を利用した者は、修習終了5年後から毎年1度、7月に年賦での返済が求められており、新第65期はすでに2回、第66期は1回、それぞれ返済を行っています。本年の7月25日には新第65期の3回目、第66期の2回目、第67期の1回目の返済が控えています。このような返済が控えていることによる谷間世代の法曹にとっての経済的負担と不平等・不公平感は、決して無視できるものではありません。

 谷間世代の法曹も、前後の世代の法曹と同じく、法の支配の実現に寄与する司法制度の担い手であることに変わりはありません。大きな志を持ち、既にそれぞれの職務において現に実力を発揮している者も存在します。しかし、谷間世代の弁護士を対象に行ったヒアリング結果等を踏まえると、志があるにもかかわらず、前述したような不平等・不公平な経済的負担が障害となって、社会から法曹に期待されているであろう法的支援が必要な分野へのチャレンジ等、法曹としての能力の更なる進化・発揮が実現できないケースが発生することを懸念せざるを得ません。

 全法曹の4分の1を占める谷間世代の法曹は、これから先の数十年にわたり司法制度を支える有為な人材です。意欲があるにもかかわらず、その能力を思いの限りに発揮できないことは、法的救済を求めている司法サービスの利用者(国民)にとっても、社会にとっても、大きな損失です。

 これまでも、当会は、平成30年1月12日付「速やかな『谷間世代』の不平等・不公平是正等を求める会長声明」等を発出するなど、日弁連及び全国の弁護士会と一体となって、谷間世代の全員に対して、国費による司法修習期間における修習給付金相当額の一律支給等、不平等・不公平を一律に解消するための抜本的な是正策を講じることを求め続けてきました。

 日弁連は、平成31年から令和7年までの間の事業として谷間世代の各会員に対して20万円(1回のみ)の給付をする制度を成立させました。そして今般、当会会員の負担のもと、当会としても谷間世代への経済的支援を行うことを決定しましたが、谷間世代の経済的負担、不公平感・不平等感を解消させるには、決して充分ではありません。
 そもそも、国の根本制度である三権分立の一翼たる司法を担う法曹は、社会の人的インフラであり、本来であれば、国が給費を支払い、責任をもって育成すべきものです。

 次は、国の番です。

 当会は、改めて、国及び関係機関に対し、谷間世代の法曹に対して少なくとも新給付金相当額を一律給付(貸与利用者には新給付金相当額を免除)する措置を講じ、抜本的な是正策を講じることを求めます。
 また、当会は、国及び関係機関に対し、司法制度を支える有為な人材を十分に活用するため、谷間世代を含む若手弁護士が、法による支援が必要なさまざまな分野の問題にチャレンジできるような制度・仕組みの創設・整備及び財政的支援などの施策を講じることを求めます。

2020年(令和2年)6月12日
札幌弁護士会
会長 砂子 章彦

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