声明・意見書

弁護人の取調べへの立会いに関し、北海道警察本部により令和3年12月27日付けで発出された通達(「被疑者取調べにおける弁護人の立会い申出等に対する対応について」)に対して抗議し、その撤回を求める会長声明

 

2022(令和4年)8月17日
札幌弁護士会
会長 佐藤 昭彦

 当会は、弁護人の取調べへの立会いを制度として実現すべく、弁護人による取調べ立会い活動に対する当会独自の経済的支援制度を新設し、それに係る規則を令和3年12月16日から施行した。
 また、この施行に伴って当会は、同月24日に北海道警察本部を訪問した上、「弁護人から取調べへの立会いの申入れがなされた場合には、被疑者が身体拘束されているか否かにかかわらず、これを拒絶することなく、弁護人と取調べ日時の調整を行った上、弁護人立会いの下で取調べを実施されたい」との申入れを行った。
 しかし、北海道警察本部は、その3日後の同月27日、刑事部長名義で通達(「被疑者取調べにおける弁護人の立会い申出等に対する対応について」)(以下「本通達」といいます。)を発出し、弁護人からの被疑者取調べにおける立会いの申出に対しては、一律に認めないとする方針を示した上、北海道警察本部各部、所属の長及び札幌方面各警察署長に対し、この方針を所属署員に徹底するよう指示していたことが、令和4年7月26日の新聞報道により明らかとなった。

 
 取調室という密室において、法律の素人である被疑者が、強大な権限を有する取調べのプロたる警察官からの取調べを一人で受ける場面にあっては、得てして被疑者の黙秘権を中心とした供述の自由が確保されず、時に虚偽の自白を生み、ひいては冤罪事件発生の温床となる。このことは、我が国の刑事司法の歴史をみても公知の事実である。
 それ故、正にこのような取調べの場面においてこそ、被疑者の弁護人の援助を受ける権利(憲法37条3項)や自己負罪拒否特権(憲法38条1項)、黙秘権(刑事訴訟法198条2項)が実質的に保障されなければならず、そのために弁護人が取調べに立ち会える状況を確保することは重要かつ有効であり、被疑者が黙秘権を行使しても取調べが継続されている現状を前提とすると、必要不可欠であるとさえいえる。
 もとより、弁護人が取調べに立ち会うことは、法令上、何ら禁じられておらず、警察官による捜査に関して必要な事項を定めた犯罪捜査規範(昭和32年国家公安委員会規則第2号)においても、その180条2項が、「取調べを行うに当たって弁護人その他適当と認められる者を立ち会わせたときは、その供述調書に立会人の署名押印を求めなければならない」と規定し、弁護人の取調べへの立会いを許容することを定めている。
 それにもかかわらず、弁護人から取調べへの立会いの申出があった場合において、それを認めないとする個別具体的事情によることなく、一律に取調べへの立会いを認めないとする本通達は、上述した被疑者の憲法上、法律上の各権利を蔑ろにし、不当に制限する違憲、違法なものであり、また犯罪捜査規範180条2項の規定に反するものでもあって、当会として、かかる本通達を看過することは到底できない。
 そこで、当会は、北海道警察本部に対し、本通達に対し、強く抗議するとともに、本通達を直ちに撤回することを要求する。

以上

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