声明・意見書

憲法記念日にあたっての会長声明

 本日、憲法記念日を迎えました。今年は、日本国憲法が施行されて79年になります。
  
 日本国憲法は、一人ひとりがかけがえのない存在であるという「個人の尊厳」を最も重要な価値とし、それを堅持し、発展させるために、基本的人権の尊重、国民主権、平和主義を人類普遍の原理としています。これらは、将来にわたって護り続けていくべき尊い理念であるとともに、今私たちが直面している様々な課題への指針を示しています。

 日本国憲法は、先の戦争による多くの犠牲に対する深い反省に基づいて制定され、徹底した恒久平和主義に立脚するとともに、国際協調主義にも立脚して、武力ではなく、信頼と対話に基づく平和と協調を目指すことを宣言していますが、現在の世界では「力による支配」が目立ってきています。
 ロシアはウクライナへの武力侵攻を継続し、イスラエルもガザ地区への軍事侵攻を続けています。また、今年1月にはアメリカ合衆国がベネズエラへの軍事攻撃を行い、大統領夫妻を拘束・移送し、さらに、2月末にはアメリカ合衆国及びイスラエルがイランへの大規模な軍事攻撃を開始するなど、世界各地で軍事力の行使が続発しています。
 二度の大戦の惨禍を踏まえ、国際連合憲章は、加盟国に紛争の平和的解決を義務付け(第2条3項、第33条)、武力行使を禁じているところ(第2条4項)、上記各国による武力行使は、この国連憲章によって禁止されている「武力の行使」に該当するものです。また、他国の内政に武力を擁して介入することは、国際法や国際秩序の根幹である「法の支配」に真っ向から反する「力による支配」、すなわち「侵略」であり許されません。このような国際社会における誤った動きや正義を口実とした一方的武力行使(侵略)に対して、平和主義と国際協調主義に立脚する日本国憲法を持つ我が国は、「力による一方的な現状変更」はどの国によるものであろうとも許されないことを毅然と表明し、外交と信頼による平和的解決の必要性と現実性を、国際社会に強く訴えていかなければなりません。
 近年我が国においても、閣議決定による敵基地攻撃能力の容認に伴うアメリカ合衆国からのミサイル大量購入や南西諸島への自衛隊の拡充、そのための防衛費の大幅増加など、対話による外交よりも「力による防衛」を優先させるかのような政策が推し進められています。
 しかし、際限のない軍拡競争は相互の脅威を増大させて信頼関係を損なうことにつながり、さらには、「力による支配」に至る危険性もはらんでいます。今国際社会で起こっている武力行使は、これらの危険性が現実化したものにほかなりません。このような現実を直視するならば、「武力では平和は作れない」との日本国憲法の理念に今一度立ち返ることこそが必要とされています。
 戦後80年を経て、世界からなお戦争が無くならず、防衛力増強が不可避ではないかという考えが大きくなりつつある現代だからこそ、改めて、日本国憲法の平和主義の理念や国際協調主義の意義を再確認し、信義と公正に基づく平和を希求するためという我が国の政策を世界に向けて発信していくことを強く求めるとともに、そのような社会を実現するため市民のみなさんと共に力を尽くしていくことを決意するものです。

 令和8年5月3日
札幌弁護士会
会長 佐々木 潤

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