最低賃金額の大幅引上げと全国一律最低賃金制度の実施及び中小零細企業への実効的な支援策を求める会長声明
- はじめに
2026年(令和8年)2月、2026年度の最低賃金改定に向けた中央最低賃金審議会の審議が開始されました。今後、夏にかけて引上げ額の目安答申が行われ、これを受けて北海道地方最低賃金審議会においても審議・答申がなされる見込みです。当会は、この審議プロセスを前に、最低賃金の大幅な引上げ、政府に対する、中小零細企業への実効的かつ十分な支援策の実施、そして、全国一律最低賃金制度の実現に向けた具体的な取り組みを求めます。 - 現在、北海道の最低賃金額は1075円です。2024(令和6)年10月に1010円となって初めて1000円を超え、2025(令和7)年にはさらに65円の引上げがなされて1075円となりました。
しかし、この最低賃金額を前提にフルタイム(月平均173.8時間)で働いたとしても、月収は18万6835円、年収は224万2020円にしかなりません。年収200万円未満がいわゆるワーキングプアと呼ばれているところ、この金額はこれをわずかに上回るに過ぎず、労働者が安定した生活を送ることができる金額であるとは到底いえません。 - とりわけ、近年の円安と物価上昇により、厚生労働省の2025(令和7)年分毎月勤労統計調査によると、名目賃金は前年比2.3%増と堅調に推移したものの、物価上昇がこれを上回り、実質賃金指数は前年比マイナス1.3%と4年連続のマイナスとなり、マイナス幅は前年より拡大しました。春季賃上げが5%を超える高水準で続いてもなお実質賃金が下がり続けているという事実は、物価上昇がいかに労働者の生活を圧迫しているかを端的に示しています。さらに、2026(令和8)年2月以降、アメリカとイスラエルによるイラン攻撃を受け原油価格が大幅に上昇し、経済状況は一段と悪化しました。このように先の見えない状況のもと、労働者の生活を守り経済を活性化させるためには、最低賃金の大幅な引上げが急務といえます。
- また、最低賃金額の地域間格差について見ると、2025(令和7)年度の最低賃金額の全国加重平均は1121円であり、北海道はこれを下回っています。東京都の最低賃金額は1226円であり、北海道の1075円とは151円の格差が生じています。
地域別最低賃金を決定する際の考慮要素とされる労働者の生計費は、最低生計費試算調査によると、都道府県間でほとんど差が無いことが明らかになっており、地域間格差を正当化する理由はありません。最低賃金額の高低と人口の転入出には強い相関関係があり、都市部への一極集中を緩和し地域に労働力を確保するためにも、最低賃金額の引上げによる格差是正、さらには全国一律最低賃金制度が早期に実現されるべきといえます。 - 他方、最低賃金の大幅引上げと全国一律最低賃金制度をともに実現するためには、中小零細企業に対する実効的な支援策を充実させることが必要不可欠です。
現在、国は、最低賃金引上げに対応した中小零細企業支援策として、業務改善助成金等の制度による支援を実施しています。しかし、同制度の直接の助成対象は「生産性向上に資する設備投資等」であり、そもそも申請可能な企業が限られる上、設備投資等の金額の一部しか助成せず、上限額もあることから、最低賃金の引上げに対する直接的かつ充分な支援であるとは言えません。
最低賃金を引上げるにあたっての中小零細企業への実効的な支援策はセットで実現されなければならないものであり、政府は、最低賃金の引上げとともに、直ちに、社会保険料の事業主負担軽減なども含めた税・社会保険料等の負担軽減などの中小零細企業に対する直接的かつより実効的な支援策を実施するべきです。 - 以上により、当会は、日本国憲法第25条の生存権の理念等に照らし、最低賃金法の目的である「労働者の生活の安定、労働力の質的向上」(最低賃金法第1条)を実現するため、政府、中央最低賃金審議会、北海道地方最低賃金審議会及び北海道労働局長に対し、最低賃金の地域間格差を解消し、北海道を含めた全国の最低賃金額について、その時間額が可及的速やかに1500円以上となることを目指してさらなる大幅な引上げを行うことを求めます。また、政府に対しては、中小零細企業への実効的かつ十分な支援策を直ちに実施するとともに、早急に全国一律最低賃金制度の実現に向けた具体的な取組みを開始するよう求めます。
2026(令和8)年5月14日
札幌弁護士会 会長 佐々木 潤













