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2006年(平成18年)11月30日
札幌弁護士会会長 藤本 明
2006年11月17日、札幌市内の女子中学生、高校生たちが、教育基本法改正案について自分たちで学習し議論した結果に基づいて意見書を作り、これを連名で安倍首相や各政党、扇千景参議院議長宛てに送ったことなどが報じられた。
ところが、このような学生たちの行動に対して、学校に、「安倍首相に送った中高校生の意見書は何だ?お前ら、学校で何を教えているんだ」という脅迫まがいの「匿名」のメールが送付され、非難の電話も複数寄せられるという事態が起きた。また、週刊新潮11月30日号は、「相手は大人に感化されやすい年頃である。教育基本法を論じるなら改正案の評価すべき点についても話し合わなかったのだろうか」「中高一貫の学校では生徒が教師に逆らうと進学できない事もあるんです」(同校の内情を知る関係者の言)などと報じている。
自ら考え、議論し、そして自分の意見を表明するということは、民主主義社会の根幹を支える重要な活動であり、それを抑制、するような社会は民主主義社会と呼ぶことは出来ない。そして、そのような活動は大人になったからといって急に出来るものではなく、子どものころからの学習・討議などを通じて培われていくものである。日本国憲法は19条で思想・良心の自由を認め、21条で表現の自由を認めている。これは大人のみならず、子どもたちに対しても当然保障されている権利である。子どもの権利条約は、「締約国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する。」(12条)、「児童は、表現の自由についての権利を有する。この権利には、口頭、手書き若しくは印刷、芸術の形態又は自ら選択する他の方法により、国境とのかかわりなく、あらゆる種類の情報及び考えを求め、受け及び伝える自由を含む。」(13条)と定めている。子どもたちは皆一人ひとり、憲法が保障する人権を保有する主体であり、皆自分の人生の主人公である。その意味で、彼らのこのような活動は評価されるべきであるし、まして非難されるべき何物もない。真剣に学習・討議をし、意見表明をした彼らに対し、脅迫まがいの「匿名」メールを送り、非難の電話をするなどの、行動を抑圧したり萎縮させるような行為、あるいはそれを「仕掛け人」の仕業などと揶揄するのは、子どもたちの自ら成長発達する権利を奪うものであり、強く非難されるべきである。
以上
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