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2006年(平成18年)11月30日
札幌弁護士会会長 藤本 明
教育基本法改正法案は、本年11月16日、与党の単独採決により衆議院で可決され、現在、参議院で審議が行われている。
当会は、先に、本教育基本法改正法案について、法改正の必要性が何ら示されず、国民的議論を欠いたまま拙速な審議を行えば、国家百年の計といわれる教育を根本において誤らせることになりかねないことを指摘していたが(本年6月9日付会長声明)、以下に指摘するとおり、当会が懸念していた事態が着々と進行していることに重大な危惧感を表明せざるを得ない。
すなわち、教育改革タウンミーティングにおいて、政府・与党は教育基本法改正の必要性を訴える「やらせ質問」を行わせていた。法改正は政府・与党の世論操作から始まった。
就任した安倍普三首相は「美しい国づくり」を提唱し、その根幹は教育再生にあるとして教育基本法改正を今国会における最重要法案と位置づけた。国民的議論不在のまま、最初に法改正ありきの姿勢が示された。
衆議院は、公聴会の開催直後に採決を行って、法案を可決させた。国民の声を聞く機会である公聴会直後の採決というのは前代未聞の事態である。政府・与党の国民的議論軽視の姿勢はますますあらわとなった。
ところで、改正法案が衆議院で可決された後、札幌市内の女子中高校生たちが、安倍首相らに「改正法案は愛国心を国民に強制するものだ。」という内容の意見書を送付したところ、これを知った大人から「安倍首相に送った意見書は何だ? お前ら、学校で何を教えているのだ。」との抗議メールが送られたとのことである。一部の週刊誌はこの子どもたちの意見書には仕掛け人がいるとして、意見書の送付を嘲笑するかのような報道さえ行っている。大人たちの心無い反応というにはあまりに陰湿な対応であり、法改正についての言論の自由を封殺しようとする傾向さえ見て取れる。
本教育基本法改正法案は、現行の教育基本法の理念を大きく転換させる内容を有している。教育の憲法といわれる教育基本法において、このような法改正が行われようとするとき、法改正の必要性が明確に示されること、国民的議論が十分に尽くされることの重要性は、繰り返し指摘してもあまりある。
当会は本教育基本法改正法案に異議を唱えるとともに、今国会での法改正に断固反対するものである。
以上
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