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声明・意見書2006年度

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名張毒ぶどう酒事件に関する再審請求棄却決定についての会長声明

2006(平成18)年12月28日

札幌弁護士会会長 藤本 明

名古屋高等裁判所刑事第2部は、12月26日、請求人奥西勝氏に係る名張毒ぶどう酒事件第7次再審請求の異議審につき、検察官の異議を容れ、2005(平成17)年4月5日に原審(請求審)である名古屋高等裁判所刑事第1部が下した再審開始決定を取消し、本件再審請求を棄却する決定を下した。

本件は1961(昭和36)年3月に、三重県名張市の奈良県との県境に近い部落で、ぶどう酒に農薬を混入して十数名を殺傷したという事件であり、請求人は一審で無罪とされながら控訴審で逆転死刑となった稀有な事件である。

原審において本件弁護団は、ぶどう酒の開栓実験を重ね、王冠の形状や封緘紙の破断状況に関する鑑定と、農薬の成分に関する鑑定を提出した上、鑑定人尋問を行なった。これら科学的立証によって王冠上の傷痕を請求人の歯痕だとする旧鑑定の証明力は完全に消滅し、犯行場所を特定した第5次請求の最高裁判所決定の誤りが明らかにされ、さらに犯行に使用された農薬は請求人が当時所持していた農薬と異なることが立証された。

その結果、確定判決の有罪認定に合理的な疑いが生じたものであり、先の再審開始決定はこれを正当に評価し、新旧証拠を総合評価して確定判決の誤りを綿密かつ明快に解明したのである。これに加え、異議審裁判所は農薬の成分に関する鑑定人尋問を再度実施し、犯行に使用された農薬が確定判決の認定と異なる疑いは一層深まったのであり、再審開始決定を覆す根拠は全くなかった。

それにも拘らずこの度の決定となったことは、裁判所が「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の基本原則を無視したものであって、極めて遺憾である。

本件請求人奥西勝氏は当年80歳の高齢であり、その冤罪を晴らすには1日の猶予も許されない。当会は日本弁護士連合会とともに奥西勝氏の無実を確信し、再審により無罪を勝ち取る日を目指して本件を引き続き支援する所存である。

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