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声明・意見書2008年度

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死刑執行に関する会長声明

 2009年1月29日、政府は、4名の死刑確定者に対して死刑を執行した。

 当会は、これまでも、死刑制度の存廃について国民的な議論が尽くされるまで死刑の執行を停止するよう政府に対し要請し、声明を発表してきた。にもかかわらず、2008年以降6回目の死刑執行であり、執行された死刑確定者の数は同年以降19名にのぼる状況であり、誠に遺憾というほかない。

 死刑については、死刑廃止条約が1989年12月15日の国連総会で採択され(1991年発効)、1997年4月以降毎年、国連人権委員会(2006年国連人権理事会に改組)は「死刑廃止に関する決議」を行い、死刑存置国に対して、「死刑の廃止を視野に入れ、死刑執行の停止を考慮するよう求める」等の呼びかけを行った。そして、死刑廃止国は着実に増加し、2008年12月4日現在、死刑存置国59か国、死刑廃止国(法律で廃止している国と過去10年以上執行していない事実上の廃止国を含む)138か国となっている。

 しかし、我が国では、死刑廃止の国際的潮流に反し、近年、死刑判決数及び死刑執行数がともに顕著な増加を見せている。こうした状況に対しては、我が国が批准する人権条約の実施機関のみならず、国連人権理事会による普遍的定期的審査においても深刻な懸念が示され、死刑廃止を視野に入れた執行停止が勧告されてきた。特に、昨年10月、国際人権(自由権)規約委員会により、世論を理由とせずに死刑廃止を前向きに検討すること、精神障がいが疑われる者等への死刑執行に対して人道的なアプローチを行い、執行日時を事前に告知すること、必要的上訴制度を導入し、再審請求等による執行停止効を確実にすること等、我が国の死刑制度を抜本的に見直すことを求める多くの勧告がなされた。さらに、昨年12月18日には、国連総会本会議において、死刑執行の停止を求める決議が、2007年12月の決議を上回る圧倒的多数の賛成で採択された。

 今回の死刑執行は、我が国が国連決議や勧告を尊重せず、国際社会の要請に応えないことを敢えて宣言する行為にほかならない。特に、今回執行された4名のうち2名は自ら控訴を取り下げ、かつ、うち1名については公判段階から一貫して精神障がいの存在が争われており、上記勧告との関係でも極めて重大な疑義が生じるものである。

 当会は、改めて政府に対し、被執行者の受刑能力についての裏付け情報など、死刑制度全般に関する情報を更に広く公開することを要請するとともに、死刑制度の存廃につき国民的議論を尽くし、死刑制度に関する改善を行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、重ねて強く要請する。

2009年 2月3日

札幌弁護士会 会長 三木 正俊

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