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声明・意見書2008年度

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ソマリア沖への自衛隊派遣に反対し、海賊対策新法の再考を求める会長声明

 本年3月13日、政府はソマリア沖の海賊から日本関係船舶を守るために自衛隊法82条に基づき海上自衛隊を派遣することを決定し、海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案(以下、「海賊対策新法案」という)を閣議決定した。そして、翌14日、浜田防衛相の命令に従って護衛艦「さざなみ」と「さみだれ」の2隻がソマリア沖に向けて出航した。
 このソマリア沖海上警備行動の発令及び海賊対策新法案は、以下のとおり、自衛隊法ひいては憲法に違反する疑いがあると言わざるを得ない。

  1. 自衛隊の海上警備活動は、憲法9条の政府解釈に立っても「自衛のため」の範囲内に止められ、わが国の主権の及ぶ範囲において「必要に応じて公共の秩序の維持に当たる」(自衛隊法3条1項)ものでなければならない。しかし、今回の海上警備行動は、領海を遥かに超えてソマリア沖まで至るものであり、その点において自衛隊法及び憲法9条に抵触するおそれがある。
  2. ソマリア沖の海賊行為防止を目的として昨年12月及び本年1月になされた国連安保理決議(1851号、1863号)では武力行使を含む「必要なあらゆる措置を講じること」が認められていることから、戦闘能力を有する自衛隊が武力行使に至るという重大な事態を招きかねない。この点において、武力行使を禁止した憲法9条に違反するおそれがある。
  3. 海賊対策新法案は、武器使用について、警察官職務執行法を準用することに加え、「船舶侵入・損壊等の制止」にあたり「他に手段がないと信ずるに足りる相当な理由」がある場合等に武器使用を認めるものとなっている(6条、8条2項)。これは、派遣隊員の「生命・身体の防衛(防護)」の限りで認めてきた従来の立法及び政府見解を逸脱するものである。この点でも、憲法9条に違反する疑いがある。

 わが国がいま、国際社会の一員としてソマリア沖海賊対策になすべきことは、憲法の恒久平和主義の精神にのっとり、ソマリアに対する人道・経済支援や沿岸諸国の警備力向上のための援助などの非軍事協力に尽力することである。
 以上の点から、当会は、ソマリア沖に自衛隊を派遣することに反対するとともに、海賊対策新法案の再考と国会に上程された際の慎重審議を求めるものである。
 併せて、当会は、国際社会における法の支配の確立を希い、平和憲法を持つわが国が国際協調、国際平和のために果たすべき役割について、市民とともに引き続き広く議論を深めていくことを宣言する。

2009年3月25日
札幌弁護士会 会長  三木 正俊

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